5年近くに及ぶドラマの幕が下りた。2021年は、仕切り直しとなろう。
16年の英国民投票、トランプ米大統領選出は衝撃的だった。先進民主国が自滅行為を繰り返す悲劇は、まるでとどまるところを知らないようだった。フランスの右翼政党「国民連合」のルペン党首、「ドイツのための選択肢(AfD)」、イタリア右派「同盟」のサルビーニ書記長はみな、先進国が抱える政治リスクを指さしていた。
トランプ氏が扇動した任期最後の米議会占拠は、このドラマのフィナーレを飾る断末魔の叫びである。
しかし、先進国の民主政は、ひどく傷みはしたものの、壊れはしなかった。いわゆる極右ポピュリズム勢力は、西欧諸国ではほぼ一様に人気を落とし、勢いに陰りがある。
何より一大中心国のアメリカで、バイデン氏が大統領に選出されたのが大きい。個人的な利益を国益や同盟国に優先させるトランプ氏がさらに4年政権を担うのに比べれば、はるかに米国や世界にとってマシになるはずだ。
欧州連合(EU)や英国にとっても、今年は仕切り直しとなる。4年半にわたり両者を振り回したEU離脱劇は、移行期も終わり、混乱の少ない貿易協定等が成立することで完了した。英国は、いまや一域外国である。
ジョンソン英首相は、離脱を成し遂げ、「主権を取り戻した」と意気揚々だ。ただし、そのコストは後払いである。すでに、国境でのチェックは追いつかず、生鮮食料の調達に影響が出ている。これから英国は約5000人の税関職員を必要とし、多くの企業や渡航者に従来不要だったペーパーワークを強いる。
そのコストは、行きつくところ、連合王国の空中分解かもしれない。スコットランドは、EU離脱を望まず、それをイングランドが押しつけた格好だ。英領北アイルランドは、一つの島をアイルランド共和国と共有しているなか、民族・宗教紛争を抑えるため、北アイルランドとアイルランドの間に国境検問を設けづらい。結果、北アイルランドは、当面EU離脱後の連合王国の中で唯一、EU単一市場の規制下にある。これも、英国内の遠心力につながる。
EUも21年には様変わりとなろう。16年の長きにわたり中心国ドイツの宰相を務めたメルケル氏が、…
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