新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、政府は緊急事態宣言の対象地域に、新たに大阪、愛知、福岡など7府県を加えた。
東京など1都3県を対象に宣言を出してからわずか6日後だ。当初は他地域の追加を否定していた。知事に迫られて方針を変える政府の対応は、場当たり的に映る。
中でも大阪について、菅義偉首相は飲食店への営業時間短縮の要請で感染を抑制したと評価し、対象に加えない考えを示していた。
実際には、年明けから感染が急拡大し、病床は逼迫(ひっぱく)していた。宣言の発令は、知事の要請から4日後になった。首相の姿勢が足かせとなり、判断の遅れにつながったのではないか。
宣言発令後も、1都3県の昼間の人出は、昨春の宣言時ほど大きく減っていない。
首相は、対策の急所は飲食だと繰り返し、飲食店への午後8時までの時短営業や夜間の外出自粛に重点を置いて呼びかけてきた。
原因を夜の飲食問題に矮小(わいしょう)化するような説明が、昼間は自粛しなくても良いというメッセージに受け止められたのではないか。
政府は今になって、日中の会食や外出を控えるよう呼びかけているが、お粗末だ。
人との接触を8割減らすよう求めた昨春のような強い対策をとっても、感染を抑え込むには2カ月かかるという専門家もいる。市中感染が広がっている以上、時間や場所を区切った対策で十分なのか、早急に効果を見極めるべきだ。
大都市圏とその他の地域との移動の抑制も重要になる。
首相は1カ月での宣言解除を目指すというが、状況が改善しなければどうするのか。テレビ番組でその点を聞かれても、「仮定のことは考えない」と答えなかった。これでは国民の信頼は遠のくばかりだ。
政府のメッセージは一貫して国民に届いていない。経済活動への影響を抑えたいという首相のこだわりと、首相が嫌がることを進言する人物が見当たらないという菅政権の構造問題があるのだろう。
国民に行動変容を要請する前に、まず首相が発想を転換すべきだ。感染の抑え込みが最優先であることを明確にし、あらゆる手段を講じる覚悟が必要だ。