はやぶさ2 「カプセル回収の舞台裏」 橘省吾・東大教授ルポ・下
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探査機はやぶさ2の小惑星リュウグウでの試料採取装置を開発し、試料の初期分析に当たる橘省吾・東京大宇宙惑星科学機構教授(宇宙化学)から届いた寄稿の最終回は、カプセルと一緒に日本へ帰り、そのふたを開けた瞬間の様子が描かれる。新型コロナウイルス対策でオーストラリアからの帰国後は2週間の隔離が求められ、自由に動けない中にもかかわらず、計画通りにカプセルの開封作業は進められた。試料採取の成功が確認され、ミッションを完遂した今、「いよいよ始まった」と橘さんが語る意味は――。
× × ×
隔離しながら計画完遂を祝福
昨年12月8日早朝、日本上空に帰ってきた帰国便の窓から富士山の姿が見えました。5週間ぶりに日本の地を踏み、羽田空港から相模原市の宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(宇宙研)まで、コンテナは精密機械を運ぶためのトラックで、私たちは車で移動しました。宇宙研では、はやぶさ2プロジェクトのメンバーがたくさん出迎えてくれましたが、私たちは帰国後2週間、再び隔離される必要があり、十分なあいさつもできないまま研究所のコンテナを開封する専用施設の中の隔離領域に入りました。
私たちと一緒に隔離期間を過ごす3人を加えた計8人で、すぐに作業を始めました。はやぶさ2のサンプルコンテナは真空中で開封するため、事前の準備が必要なのです。作業は、帰国した8日の午後から早速始まり、専用施設内でリュウグウの試料を空気に触れないように取り扱う装置(クリーンチャンバー)にサンプルコンテナが取り付けられたのは、計画通りの11日夜でした。ここまでの作業を完走した私たちは、隔離された環境でお祝いをしました。
サンプル確認「あの粒子は……」その場で始ま…
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