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検察「人命軽視の姿勢が顕著な組織だ」と批判 工藤会トップに死刑求刑

福岡地裁などが入る庁舎

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 市民4人が死傷した4事件を巡る公判で、検察側が特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップに選択した求刑は極刑だった。長年、市民を恐怖に陥れてきた工藤会の壊滅を目指し、トップである野村悟被告(74)らの逮捕で始まった福岡県警の「頂上作戦」は着手から約6年4カ月。野村被告らの刑事責任を問う裁判は最終局面に入った。

 14日午後1時半前、福岡地裁の法廷に工藤会総裁の野村被告と同会会長の田上不美夫被告(64)がともに黒っぽいコートやスーツ姿で入廷した。「極刑を回避する特段の事情はない」。開廷から約3時間半がたった午後5時ごろ、検察官が厳しい刑を求めても、2人は身じろぎせず、動揺したそぶりは見せなかった。

 野村被告は2000年1月に4代目工藤会の会長に就き、田上被告と組織内で絶対的な存在感を築いてきたとされる。利権介入に応じない企業や関係者だけではなく、意に沿わない市民まで標的としてきたとされる工藤会。03年には系列組員が暴力団追放を掲げる同市小倉北区のクラブ「ぼおるど」に手投げ弾を投げ込み十数人が負傷し、12年は市内で暴排標章を掲示した飲食店への放火や店関係者への切りつけが相次いだ。

 検察側は論告で「工藤会は目的達成のためならば見境なく襲撃の標的とする人命軽視の姿勢が顕著な組織だ」と批判した。

 検察側は4事件の動機や背景を説明。元漁協組合長射殺事件は、港湾工事に絡む利権介入を拒む被害者一族を屈服させることが動機だったと指摘した。野村被告は当時、工藤会の前身の工藤連合草野一家の2次団体「田中組」の組長で、配下組員が組織的に関わっており「(関与した組員に)指示できたのは野村被告だけだ」とした。

検察官の論告に耳を傾ける野村悟被告(中央)と田上不美夫被告(右)

 元福岡県警警部銃撃事件は、工藤会の取り締まりを強化した警察をけん制するために元警部を狙ったと指摘。看護師刺傷事件は、脱毛施術などで不満を抱いた野村被告にしか犯行動機はないとし、歯科医師刺傷事件は父が漁協幹部で、利権介入を拒み続けることへの見せしめだったとした。

 野村被告に次ぐ立場として無期懲役と罰金2000万円を求刑された田上被告は、公判中はずっと手元の資料に目を落とし、検察官の論告に耳を傾けていた。

 野村被告の主任弁護人は公判後「間違ったことばかり言っている。事実と異なり証拠に基づいていない」と話した。福岡地検の幹部は「適正な判決が出て処罰されることで、安心・安全な社会が実現される」と述べた。

「上意下達」の組織性立証が焦点

 特定危険指定暴力団「工藤会」のトップ、野村悟とナンバー2の田上不美夫両被告の公判では、市民襲撃4事件で既に有罪が確定した実行役らの組員に両被告が直接指示した証拠は出なかった。そこで検察側は、工藤会がトップの指揮命令なしに組員が会の運営に影響する事件を起こせない「上意下達」の組織だと立証することで指示の存在を示そうとした。間接事実を積み重ねた組織性の立証が尽くされたと裁判所が判断するかが判決の焦点になる。

 指示の直接証拠がない中で、裁判所が上位の幹部に有罪を言い渡した例は過去にもある。神戸市で2007年5月、指定暴力団山口組(当時)系傘下組織の幹部が刺殺された事件では、配下の組員に殺害を指示したとして組織犯罪処罰法違反の罪に問われた別の幹部に対し、大阪高裁が14年1月に1審の無罪判決を破棄し懲役20年の判決(最高裁で確定)を言い渡した。

 高裁は判決で暴力団の厳格な上下関係を重視。配下の組員に被害者への個人的な利害や恨みがない以上、組織運営に影響する事件を「絶対的支配力を持つ被告の意思なしに起こすことはあり得ない」と断じた。

 工藤会の公判でも検察側は、会の利権獲得や個人的な恨みなど両被告には動機があり、事件の中心的な役割を担ったとされる傘下組織「田中組」に絶対的な支配力を有していたとの立証に努めた。暴力団犯罪に詳しい元最高検検事の城(たち)祐一郎・昭和大教授は「暴力団の組織統制上、親分の『あいつ気にいらん』との意思表示が子分に伝われば共謀は十分成立する。暗黙のうちに意思疎通できる関係性にあったと裁判所が認定するかも焦点だ」と指摘する。

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