毎日新聞
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「女・男の気持ち」(2021年1月7~13日、東京・大阪・西部3本社計21本)から選んだ「今週の気持ち」は、大阪本社版1月11日掲載の投稿です。
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<今週の気持ち>
コロナの新年 大阪府豊能町・姫野豊さん(無職・70歳)
いつもなら子供たちが家族で帰省してきてにぎやかな年末年始が、コロナ禍のため帰省も自粛となり、今年は夫婦二人で静かな新年を迎えた。孫たちとはビデオ電話で話すことができても、なんだか物足りない。
娘と息子は就職とともに東京勤務となった。とりわけ娘は親元を離れるのは初めてのことだったので何かと気がかりで、春と秋には衣替えの荷物を車に積み、夫婦で高速道路を娘の元へ走ったものだ。
やがて2人はそれぞれ東京で家庭を持ち、孫もできた。出産、入園、入学など、折々に訪ねて行っては、孫たちと至福のひとときを過ごしてきた。名所にも案内してくれ、その都度、東京での物語に新たな一ページが加わった。
しかし昨年は、息子の方の、上の孫の小学校入学で、いざ出発という段に東京への往来自粛の要請が出て、残念ながら行くのを断念した。
20年前、ホームヘルパーの資格を取得するため講習を受けた。そのとき講師が「団塊の世代の皆さんは親の老後の世話をする最後の世代で、子供が親の老後を見ることがない最初の世代ですから、自立しての終活を考えてください」と話をされた。このコロナ禍でその言葉がよみがえる。
家族それぞれ思いやりを持ちつつも、やがて東京との距離を遠く感じることになるだろう。そんな将来を見据えて暮らしていくことも大事だと考えさせられた。
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<担当記者より>
前回の「今週の気持ち」もコロナ禍による年末年始の帰省自粛の投稿(東京本社版)が選ばれましたが、大阪本社にも帰省自粛をめぐる投稿が多数届きました。それ以前にも、入院中の友人や介護施設に入っている親と面会できずに寂しいとか、遠くの親族の葬式に参列できなかったいう投稿もたくさんいただいています。
姫野さんの投稿には、介護保険制度が始まった頃に受けたホームヘルパーの研修の体験が記されていました。コロナの「コ」の字もない時代に、今後は親子の関係が疎遠になっていくと指摘した講師の言葉を思い起こしたそうです。
コロナに振り回される人間社会。やがては克服するのでしょうが、コロナ後の世界は、コロナ前とは違った景色に見えるかもしれません。「人の幸せとは?」「家族の幸せとは?」。そして、「私の幸せとは?」--そんな根源的な問いかけにも思いを致しました。
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