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「自分」は何者か、自らに問い ライフワーク研究からみつける一生の仕事 編集者・鈴木隆さん

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インタビューに答える出版社タングラム代表の鈴木隆さん=横浜市神奈川区で、西夏生撮影
インタビューに答える出版社タングラム代表の鈴木隆さん=横浜市神奈川区で、西夏生撮影

 ライフワーク研究をライフワークにしている人がいる。収入を得るための職業とは別に、死ぬまで追い続けられるテーマ、営みのことだ。楽しそうな気もするが、なくてもいいような気もする。その辺、どうなのか。

 横浜市の編集者、鈴木隆さん(74)は出版社勤務を経て1984年に書物学専門の出版社タングラムを創業し、少部数ながら高価な本を出してきた。ライフワーク研究は80年代に始め、有名無名を問わず内外の約2500人を取材し、97年に「ライフワーク発見法」(三省堂)、昨年10月に「ライフワークの探究者たち」(みやび出版)を出した。新刊には司馬遷、ファーブル、ゴッホ、柳田国男などの偉人から、あまり広くは知られていない長崎学の古賀十二郎、かっぱ研究の和田寛まで約50人の人生を紹介している。

 鈴木さんによると、ライフワークという英語が初めて活字になったのは1871年で、バーという米国の神学、天文学者が聖書研究書で「全生涯の目的となる仕事」の意で使った。日本では田山花袋が1907年の小説「蒲団」で<一生(ライフ)作(ワーク)に力を尽す勇気もなく>と、ルビの形で使ったのが最初だという。

 鈴木さんの言うライフワークとは「自分で見つけ、時間と労力を惜しまず、深く掘り下げ、新たなものを生み出し、社会に示す作業」を指す。大方は途中で飽きてしまうか、あるいは勉強はしても創造には結びつかない。要は「これは私にしかやれないという『世界』を作ることだ」と鈴木さんは言うが、そこに行き着く人は何%なのか。

 「ライフワークなんて持たなくてもすてきな、幸福な人生を十分送れる」と断った上で、鈴木さんは「印象として全体のざっと5%、20人に1人くらいでしょうか」と言う。

 「逆に、ライフワークに向かない人は、何ごとにも他人の示した道に依存し、受動的で飽きやすく、流行を追うことや自己主張に熱心で、新しいものを作り出すことに興味がなく、他者、社会との接点を無視する人。多趣味の人もライフワークには不向きです。広く浅い物知りになって、何でもかんでもしゃべる人はダメです」。なんか耳が痛いが、大半の人はそうなのではないか。「趣味や道楽を見下すわけではないのですが、例えば俳句や短歌の人口ってすごいでしょ。師匠に付き、添削されて伸びていく」。でも、他者への依存がご法度なら師匠に付いている時点でライフワークではない、ということになる。

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