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かつて我が家の門松は、祖父が作っていた。松、竹の葉、白梅の蕾、黄色い小菊とうめもどき一枝を、段々になるよう丈を切る。根元に寒椿一輪を添えて紐(ひも)で結び、その上に半紙を巻く。最後に、結び切りの水引を巻いて出来上がりだ。
ある年、「お宅の植木屋さんを紹介してほしいのですが」と、ご近所の人が訪ねてこられた。我が家の門松を気にいり、同じものを飾りたいと言われる。母が、「あれは父が作ったものです」と作り方を説明すると、とても喜ばれたという。外出から戻った祖父にその話をすると、たいそうご満悦だったそうだ。
私は、祖父のように門松を作る事はできないが、お正月用のお花は用意しようと、毎年近くの花屋さんへ出かける。お店に入ると茜(あかね)色の花が目に入った。ヒメユリだ。水桶には、蕾(つぼみ)が沢山(たくさん)ついた椿(つばき)がさしてある。お店の人に聞くと、白に赤い筋の入った一重だと言う。馬込の庭にあった椿が、目に浮かんだ。甘い香りのさきには、水仙があった。椿と水仙は祖父が好きだった花である。椿は水切り…
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