トランプ氏で見えた核ボタンのリスク ICAN委員が語る「次の一手」
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核兵器の使用や保有を全面禁止する核兵器禁止条約が1月22日に発効する。しかし、保有国や核の傘の下にある日本は加わっていない。核廃絶に向けて、条約発効に続く「次の一手」をどう打っていくのか。条約発効の立役者である国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」国際運営委員の川崎哲さん(52)に聞いた。【國枝すみれ/統合デジタル取材センター】
核兵器に関わることがビジネスリスクに
――22日に条約が発効して、具体的に何が変わるのでしょうか。
◆核兵器がなくなるわけではありませんが、核兵器に対する考え方が大きく変わります。これまで、核兵器は存在が許され、それを保有する国は「大国」として認識されてきました。今後は、核兵器は違法なもの、世の中にあっていけないもの、となり、核兵器に対する政治的、経済的、社会的圧力が強まります。つまり、核兵器を保有することの国際政治上の価値がプラスからマイナスになる。金をかけて維持していくことに意味があるのか、むしろマイナスではないか、という判断が生まれる。核兵器を保有することが「すごいこと」から「悪いこと」になるのです。
――実際に変化を感じますか。
◆投資回避(ダイベストメント)が拡大しています。2017年後半以降、核兵器関連企業に投資・融資をしていた約300の金融機関のうち、100以上が投資や融資をやめました。日本でも同様の動きが始まりました。共同通信によれば、20年5月の時点で、16銀行が核兵器関連企業への投資や融資を自制する指針を持っています。メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループが「核兵器製造への融資を禁止する」と明記したガイドラインを公表したことは感慨深かった。「核兵器に関わることはリスク」という認識が経済界に生まれてきたわけです。
――19年秋のローマ教皇の来日も大きな変化をもたらしました。
◆教皇は長崎と広島で核兵器の使用だけでなく保有することも批判する演説しました。保有を否定したということは抑止論の否定です。宗教界は「核兵器は非人道的だから、世界から退場させよう」という社会認識を強める大きな力です。
政治的にも変化が起きています。保有国が禁止条約への批判を強めているのは追い詰められているからです。核は悪いもの、という世界規範を作るという禁止条約の戦略が奏功しているのです。核の傘の下にいる北大西洋条約機構(NATO)加盟国や日韓など22カ国の元首脳ら56人が禁止条約加入を求める公開書簡を発表しました。署名者の中にはNATOの元事務総長が2人含まれています。核があった方が安全保障上マイナスだ、といっているわけです。
北朝鮮が非核化したら?
――心配なのは北朝鮮です。国際規範も国際法も無視する国への対応はどうすればいいのか。そういう国だけ核を持つのは怖いのです。
◆米国では自衛のために銃を持つことが認められているので、大勢の人が銃を持つようになりました。その結果、乱射事件が増えました。核兵器も同じです。抑止のためなら持ってもいいじゃないか、と核を持つ国が増えたら、核戦争の危険が高まるのです。
もちろん、条約一本ですべてを解決できるわけではありません。国際ルールを守らない国やテロ組織はあります。法律で殺人罪を定めても、それだけで殺人がなくなるわけではありません。だからといって殺人罪を定めない方がよいということにはならない。法があった方が断然よい。核兵器禁止条約も同じです。この条約に加えて、さらにバックアップは必要です。穴がある部分については、国連の改革や集団安全保障体制の強化などで、塞いでいくべきです。
――禁止条約はゴールを示すが、そこにいたるプロセスがない、という批判があります。
◆この条約ほど保有国が核廃絶するプロセスを明確に書いた条約はありません。これまで…
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