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堀江敏幸・評 『石を放つとき』=ローレンス・ブロック著、田口俊樹・訳

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『石を放つとき』
『石を放つとき』

 (二見書房・2750円)

年を重ねた探偵が生む厚み

 ローレンス・ブロックがマットことマシュウ・スカダーというアル中の私立探偵を主人公にしたシリーズ第一作、『過去からの弔鐘』を刊行したのは、一九七六年のことである。以来、四十五年の歳月が流れた。邦訳紹介されたのが八七年だから、日本語でスカダーと出会った読者も、すでに三十数年の年を重ねている。

 ニューヨーク警察の刑事だったスカダーは、強盗殺人犯を追跡中、自分の発した流れ弾でひとりの少女の命が奪われるという痛ましい出来事をきっかけに妻子と別れ、職を辞した。酒におぼれる無免許の私立探偵は定型のうちである。スカダーの一人称に特別な響きがあったのは、アルコール依存症の自主治療の会に顔を出して過去を悔い、わずかでも前を向こうと怯(おび)えながら弱さをさらけ出し、さらけ出すことで弱さを認める強さを…

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