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サンデー毎日発

受験のプロが直言 緊急事態下の大学入試はかく備えよ

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初の大学入学共通テストを迎え、試験の開始を待つ受験生ら。新型コロナウイルス対策として、使用しない席には赤いバツ印が付けられ距離が保たれていた=東京都文京区の東京大学で2021年1月16日
初の大学入学共通テストを迎え、試験の開始を待つ受験生ら。新型コロナウイルス対策として、使用しない席には赤いバツ印が付けられ距離が保たれていた=東京都文京区の東京大学で2021年1月16日

 受験シーズン直撃と言わざるを得ないだろう。大学受験の最初の山場まで10日を切っての緊急事態宣言の再発令だ。首都圏を中心に新型コロナウイルスの感染が再拡大する中で行われる、異例中の異例の入試には、どう備えるべきか。“受験のプロ”に聞いた。

 いよいよ入試シーズンの幕開けだ。私立大は出願受け付けがスタート。一方、1月16、17日には大学入試改革の目玉として、2021年度(21年4月入学)から初実施される「大学入学共通テスト」の第1日程が各地で行われる。

 ただ、コロナ禍の影響は入試改革よりも、はるかに大きい。そもそも昨年度までの大学入試センター試験に代わって導入される共通テストに「第1日程」が設定されたのは、新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校で学業に遅れが出ることが予想されたためだ。実施主体の大学入試センターによると、約53万人が出願して99.9%が第1日程を占め、第2日程(1月30、31日)の出願者は0.1%となっている。

 第2日程は新型コロナ感染をはじめ病気など、やむを得ない事情で第1日程を受けられなかった受験生への追試を兼ねる。なお、第2日程を申し込みながら、同様の理由で受けられなかった受験生には2月13、14日に特例追試がある。

 そこに首都圏の1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)に緊急事態宣言だ。政府は萩生田(はぎうだ)光一文部科学相が1月5日に臨時記者会見を開き、共通テストは予定通り行うと表明した。各大学にも入試を行うように促した。小中高校や大学の一斉休校も要請しないことを明らかにしている。

 また、文科省は昨年6月、感染したり濃厚接触者になったりした受験生に対し、追試などの救済策を必ず講じるよう各大学に求めた。その意味では、共通テストや国公立大の2次試験、私立大入試は、たとえ新型コロナで一度チャンスを逃したとしても症状が回復などすれば、再挑戦の舞台はあると思ってよいだろう。

 2月1日からは本格的に私立大入試が始まる。緊急事態宣言の期間は今のところ、同7日までだ。首都圏では宣言発令下での入試になる大学も出てくる。

 大学によっては、何千人もの受験生が1キャンパスに集まる。広大なキャンパスに校舎が点在していれば何の問題もない。だが、今や学生に人気のビル型キャンパスの大学も少なくない。入り口ではかなりの「密」になることは確実で、感染リスクは高まる。

 そのため徹底した感染防止対策が必要だ。今年度入試はマスクを着用し、昼食は自席でとり、友人とも話さないことなどが求められている。試験場の出入りごとの消毒、休憩時間には窓を開放して10分以上の換気が行われる。例年よりも寒い中での受験になりそうだ。防寒対策も大事だろう。

 他に予想される影響は、どんなものだろうか。代々木ゼミナール教育総合研究所の坂口幸世(ゆきとし)主幹研究員は私立大で広がる「共通テスト利用入試」に着目する。

 「地方の受験生が首都圏の大学を受験する場合は、受験生本人は平気でも、親が止めるケースがあるでしょう。私立大ですと、受験会場に行かなくても、出願書類と共通テストの成績で合否が決まる共通テスト利用入試の人気が、さらに上がりそうです。地方に限らず首都圏の受験生も万が一、入試が実施されなかった場合を考え、とりあえずは共通テスト利用入試に出願しておく受験生が増えるのではないでしょうか」

「右往左往せずに情報チェック」

 共通テスト利用入試は首都圏では慶応義塾大、国際基督教大を除き、ほとんどの大学で実施されている。また、千葉工業大は共通テスト利用入試の受験料を、コロナ禍での不況を考慮して今年度は無料にした。

 昨年度は10%ほど志願者が減った共通テスト利用入試だが、今年度は感染リスクの軽減という観点からも人気を集め、志願者が増えそうだ。

 さらに、一部私立大が導入する「全学統一方式」の人気も上がりそうだ。これは文系、理系学部がまとまって同じ問題で入試を行う方式で、同じ大学でも他学部・学科を併願できる。一度の受験で複数の学部・学科の合否判定も受けられる。試験場に行く機会が減るため、感染リスクの観点から注目の方式だ。MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)や関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)が実施している。

 駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は「東京で長期間ホテルに滞在し、大学受験するというのを敬遠する動きが出そうです。共通テスト利用入試や全学統一入試を利用し、滞在期間を短縮する可能性もあります。今年は大学のキャンパスで受ける入試の併願が減るのではないでしょうか」と展望する。

 一方、2月25日から国公立大の2次試験の前期日程が始まる。昨年度は北海道大が学内に感染者が出たため、後期日程の2次試験を中止し、センター試験の成績だけで合否を決定した。

 むしろ、東大のように「何が何でも大学独自試験を行う」という姿勢の大学は少数派だろう。横浜国立大のように教育学部の一部を除いて感染の拡大防止を理由に、最初から共通テストの成績と出願書類で合否を決める大学もあるほどだ。

 河合塾教育情報部の富沢弘和部長は次のように話す。

 「私立大は予定通り入試を実施しますが、国公立大では2月になってからの判断です。横浜国立大のように共通テストの成績だけで合否判定するなど、入試を変更する可能性があります。面接を中止する大学も出てきそうです。入試情報には今後も注意が必要です」

 今年度は共通テストの重みが、特に増しそうだ。ただ、こうも付け加えた。

 「親が共通テストの重要性を子どもにアドバイスするのは、この時期だとプレッシャーを与えることになりかねません。避けたほうがいいでしょう」

 専門家3人は「緊急事態宣言が出ても、あたふた、じたばた、右往左往しないのが得策」と口をそろえた。そして、新型コロナに感染しても再チャレンジの場を設けるのは、いわば国の施策だ。となると、今まで通り平常心で、健康にだけは注意し、入試に向かっていくことが大切といえそうだ。受験生も家族も、まずは落ち着いて受験に備えよう。【大学通信・安田賢治】

*「サンデー毎日」2021年1月24日号より転載

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