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香港の民主派弾圧 司法の「中国化」を憂える

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 香港で国家安全維持法(国安法)が施行されて半年が過ぎた。新年早々、民主派50人以上が逮捕されるなど中国に批判的な政治勢力が一掃されようとしている。

 さらに懸念されているのが司法の独立の危機だ。司法まで中国に従属しては、香港の高度な自治を認めた「1国2制度」が完全に崩壊することになる。

 香港では英国植民地時代から行政の力が強く、民主主義国家のように立法、司法との相互抑制が機能していたわけではなかった。それでも返還後は「三権分立」の建前が教科書にも掲載されてきた。

 しかし、昨年6月末の国安法施行後、林鄭月娥(りんていげつが)行政長官は「香港に三権分立はない」と明言し、教科書の記述も削除された。

 行政を監督する立法会(議会)の機能は民主派弾圧で形骸化した。続いて昨年来、司法の独立を疑わせるような事態が相次ぐ。

 香港政府が議会を経ずに施行した「覆面禁止法」について、終審法院(最高裁)が下級審の判断を覆して支持したのがその一つだ。

 中国と対立し、国安法違反罪などで起訴された「蘋果(ひんか)(りんご)日報」の創業者、黎智英(れいちえい)氏の保釈も同法院の判断で取り消された。

 香港の中国系紙や中国メディアが下級審の保釈決定を批判し、中国の介入を求めるなど司法当局への圧力を強めていた。

 民主活動家の周庭(しゅうてい)氏は無許可の集会を扇動した罪で実刑判決を受けた。民主派に対し、従来にない厳罰が言い渡されるケースが増えている。

 香港では英国と同じコモンロー(慣習法)の体系を持つ国出身の裁判官任用が認められ、終審法院の裁判官は過半数が外国籍だ。

 こうした規定も司法の信頼性を確保する「1国2制度」の重要な要素だった。しかし、中国や親中派からは外国籍裁判官は必要ないという議論が出始めている。

 司法の独立が香港に対する外国企業の信頼を高め、国際金融センター、貿易港としての地位を支えてきた。「法の支配」が根付かない中国との大きな違いだ。

 香港の現状に対する国際社会の目は極めて厳しい。司法の独立さえ守られないのでは香港の繁栄は続かない。中国や香港当局は対価の大きさに気づくべきだ。

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