「その気になればできる」 国産長射程ミサイルに込められた「隠れた狙い」とは

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陸上自衛隊のミサイル「12式地対艦誘導弾」の発射システム(手前)=沖縄県宮古島市で2020年4月5日午前11時34分、朝日弘行撮影
陸上自衛隊のミサイル「12式地対艦誘導弾」の発射システム(手前)=沖縄県宮古島市で2020年4月5日午前11時34分、朝日弘行撮影

 政府は2020年12月、陸上自衛隊の国産の地上発射型ミサイル「12式地対艦誘導弾」を改良し、射程を大幅に伸ばすことを正式に決定した。敵の射程圏の外から艦艇などをたたく手段を確保し、「いざ」という時には相手国内への攻撃にも転用できるようにしておく――との狙いがあるが、開発の目的はそれだけではない。「隠された狙い」を探るうえでのキーワードは、「中距離核戦力(INF)全廃条約の失効」のようだ。【青木純】

射程はどこまで伸びるのか、政府・与党関係者は…

 陸自の伝統で「ひとにしき」と読む12式。地上に展開させた移動式発射台(TEL)から撃ち出し、海上を航行している敵の艦艇などを破壊するためのミサイルだ。12年に導入が始まった現行品の射程は陸自の装備で最長クラスの約200キロで、熊本市の陸自健軍駐屯地などに配備されている。

 このミサイルの射程をさらに伸ばすため、政府は20年12月、21年度予算案に改良版12式の開発費として335億円を計上した。目標とする射程は公表されていないが、政府・与党関係者は「まずは900キロ、最終的には1500キロまで伸ばしたい」と明かす。21年度から試作を始め、移動する標的を狙えるようにするため衛星経由でミサイルを誘導する機能や、敵のレーダー網をかいくぐる「ステルス性能」の確保も目指している。

「周辺国のミサイル能力が向上する中、日本を守れない」

 射程を延長する背景には「周辺国のミサイル能力が向上する中、相手の射程圏外から攻撃できる装備を持たなければ自衛官の安全を確保できないし、日本を守ることもできない」との問題意識がある。

 実際、北朝鮮は中距離弾道ミサイル「ノドン」など日本を射程に収める弾道ミサイルを複数保有している。さらに、開発を進めている潜水艦発射弾道ミサイルの中には日本全域を攻撃可能なものもあるとされる。

 米国防総省が20年に公表した報告書によると、中国は19年の時点で射程500~5500キロの地上発射型ミサイルを1250発以上保有しており、特に「空母キラー」と呼ばれる中距離弾道ミサイル「東風26」の数を急増させている。ミサイルの撃ち合いになった場合には射程の短さが命取りになりかねず、政府や与党内では射程の長い装備を充実させるべきだという声が強まっていた。

 12式が国産ミサイルであることも重要なポイントとなっている。国産であれば日本独自の判断でさらなる改良を施すことができ、地上発射型のミサイルを船に搭載できるようにしたり、航空機に搭載できるようにしたりする「ファミリー化」もしやすいからだ。

 政府は現在、航空自衛隊の戦闘機・F15に外国製の長射程ミサイルを搭載できるようにする改修に向けて米政府と協議中だが、費用が当初の見込みより大幅に膨らみ実施が遅れている。国産の地対艦ミサイルであれば短期間、低コストで航空機発射型に変更できるとされ、政府は12式の派生型を外国製の長射程ミサイルの代替品としてF15に載せることも検討中だ。

 射程を伸ばした12式は、相手国の領土にあるミサイル発射基地や滑走路などを攻撃する、いわゆる「敵基地攻撃」にも転用できる。自民党の閣僚経験者は「日本は敵基地を攻撃するための能力を持っています、とあえて宣言する必要はない。その気になれば敵基地攻撃ができるような状態にしておくだけでも、周りの国をけん制することができる」と話す。

「米国が中距離ミサイルの配備を迫ってきた場合の交渉ツール」

 だが、政府の狙いはそれだけではない。…

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