東大で博士号を取得した野口聡一飛行士が宇宙空間で探求したこと

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国際宇宙ステーションに滞在中の野口聡一宇宙飛行士=2020年12月28日撮影、JAXA・NASA提供
国際宇宙ステーションに滞在中の野口聡一宇宙飛行士=2020年12月28日撮影、JAXA・NASA提供

 米国の新型宇宙船「クルードラゴン」で2020年11月に国際宇宙ステーション(ISS)へ向かい、3回目の滞在中の野口聡一宇宙飛行士(55)は、自らの体験を基にした「当事者研究」で論文を執筆し、2020年春に東京大大学院で博士号を取得していた。「身体感覚や認知は、宇宙でどう変化して適応するのか」がテーマだった。宇宙空間で探求し、見いだしたことは何だったのか。【池田知広/科学環境部】

宇宙での「内面の変化」、人文社会科学の観点から研究

 野口さんは以前から、自身も含め多くの宇宙飛行士が、宇宙での滞在前後で内面に変化があることに関心を抱いていた。実際に、元宇宙飛行士の毛利衛さん(72)は、地球を一つの「生命体」として感じるようになり、現役の油井亀美也さん(50)は、環境保全や世界平和の大切さを意識するように考え方が変わったと述べている。

 「宇宙で過ごすことがヒトにどのような影響を与えるのか。自然科学的な視点だけでなく、心理学や哲学など、人文科学的な視点から取り組みたいと考えた」。取材に対し野口さんは、研究を始めた動機を、ISSから宇宙航空研究開発機構(JAXA)広報を通じてメールで回答してくれた。

 当初は宇宙飛行士としての業務・訓練の傍ら、自分なりに分析をまとめていた。10年2月には、2回目の滞在中だったISS内で座禅を組む野口さんの姿を米航空宇宙局(NASA)が公開している。

 だが、研究者からまともに取り合ってもらえない時期が続き、「博士号を取得できるほどの論文にまとめ上げないと、いつまでも研究者として認められない」と感じていた。そんな中、野口さんの研究を後押ししていた駒沢女子大の丸山慎准教授(心理学)が仲介してくれた出会いがあった。障害者などが自分の経験を研究対象にする「当事者研究」の第一人者で、脳性まひの当事者でもある熊谷晋一郎・東京大准教授から、共同研究に誘われたのだ。16年ごろのことだった。

ほぼ無重力で座禅組んだ連続写真を…

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