「女・男の気持ち」(2020年1月14~20日、東京・大阪・西部3本社版計21本)から選んだ「今週の気持ち」は、東京本社版1月15日掲載の投稿です。
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<今週の気持ち>
手に入れたもの 東京都新宿区・小川陽子さん(会社員・49歳)
コロナ禍になり、在宅勤務が認められるようになった。午前10時半ごろになると、お散歩の保育園児たちがにぎやかに通り過ぎていく。
息子も保育園での時間をこんなふうに過ごしていたのかな、と思いを巡らせながら、その元気な声を聞くのが、癒やしのひとときとなっている。
小6の息子は0歳から保育園に通い、小学生になってからは学童保育のお世話になった。学童を卒業した4年生からは、学校から帰ると自分で家の鍵を開け、1人でおやつを食べ、黙って塾へ出かけていたのだろう。
在宅勤務となった今は、彼を送り出すこともできるし、ご機嫌な口笛が聞こえてきたら玄関の鍵を開けてあげることもできるようになった。私が家にいる生活になったことについて、息子は何も言わないが、帰宅した彼の笑顔を見ると、今まで寂しい思いをさせてきたのではないかと一瞬、胸がチクリと痛む。
ただ、息子の保育園生活は、今でも戻りたいと思うほど幸せだったようだし、学校から帰って親にガミガミ言われずにテレビが見られたのも、まんざら悪くなかったのかもしれない。
物事をある一つの側面からしか見ずにいると、気づかないことがある。コロナ禍で失ったものがある一方、手に入れたものもある。そのことに気がつき、少し救われたように思う。
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<担当記者より>
昨年の春以降、担当記者も在宅で働く日が増え、投稿者の小川さんとほとんど同じ経験をしています。もう15年も、保育園や自宅で「お帰りなさい」と子どもに声をかけられる立場だった自分が、今は学校から帰宅する子どもに「お帰り」と声をかけている――。新鮮な体験です。
我が家の場合、一緒にいる時間が増えたことで、子どもとの会話も増えました。今までの育児が、忙しいことを言い訳にしていかに雑だったか気付き、反省する機会も少なくありません。ただ、すぐには行動を改められないのですが……。一方、子どものほうはマイペースでテレビやゲーム、動画を楽しみ宿題は後回し。親がいてもルーティンは崩しません。
昔なら「鍵っ子」と呼ばれた子どもですが「家で親に干渉されない自由な時間が持てたのは、楽しかったでしょうね」。小川さんと一致した意見です。環境が変わって「新しい日常」となり、親はあれこれ考えてしまいますが、子どもたちは案外たくましく、順応しているような気がします。
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