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トップに聞く 「実工学教育」で人に寄り添う実践的技術者を養成 日本工業大・成田健一学長

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なりた・けんいち 1979年3月広島大学総合科学部卒業。86年6月同大学大学院工学研究科博士課程単位取得満期退学(環境工学専攻)。同年7月広島大学工学部助手を務め、工学博士号を取得。都市域の熱環境・風環境、建築環境工学が専門。97年4月日本工業大学工学部建築学科助教授。2000年4月同学部学科教授。11年12月同大学教務部長に就任。15年12月から現職 拡大
なりた・けんいち 1979年3月広島大学総合科学部卒業。86年6月同大学大学院工学研究科博士課程単位取得満期退学(環境工学専攻)。同年7月広島大学工学部助手を務め、工学博士号を取得。都市域の熱環境・風環境、建築環境工学が専門。97年4月日本工業大学工学部建築学科助教授。2000年4月同学部学科教授。11年12月同大学教務部長に就任。15年12月から現職
日本工業大のキャンパス内には工業技術博物館があり、1891(明治24)年にイギリスで製造された蒸気機関車が動態保存されている 拡大
日本工業大のキャンパス内には工業技術博物館があり、1891(明治24)年にイギリスで製造された蒸気機関車が動態保存されている

工学基礎教育を大改革

 工業高校生が推薦で進学できる大学として開学した日本工業大学は、半世紀を超える歴史を持つ。2018年には、それまでの工学部1学部から3学部体制にするとともに、工学基礎教育の改革を行い、出身高校に関係なく学生一人一人に合わせた教育を進めようとしている。激しく変化する社会の中で、時代の変化に対応できる技術者をどう育成しようとしているのか、成田健一学長に聞いた。【中根正義】

 ――日本工業大学は開学以来、工業高校の生徒を多数受け入れてきました。まず、その歴史を教えてください。

 本学は1967年、工業高校の課程を学んだ生徒が推薦で進学できる工学系単科大学として設立されました。入学時から本格的に実験・実習・製図科目を履修し、技術社会の現場で即戦力として活躍できる「実工学教育」を特色としています。レベルの高い実習教育で鍛えられた学生の社会での評価は極めて高く、毎年高い就職率を誇っています。

 しかし、創立から50年以上が経過するうちに、一般入試での合格者や普通科高校出身者も多数入学するようになり、学生の顔ぶれが多様化してきました。入学者の多様化に伴う志望の変化と科学技術の高度化・複雑化に対応するために、2018年に学部・学科を改組しました。これまでの工学部1学部7学科を基幹工学部、先進工学部、建築学部の3学部6学科体制に再編しました。基幹工学部にはこれまで本学になかった化学系の応用化学科を、先進工学部にはAIやロボット技術などの先駆的分野を学ぶロボティクス学科を新設し、理工系総合大学として新たなスタートを切りました。

 ――学部再編と併せて工学基礎教育の改革も行われたそうですね。

 これまで工業高校生用、普通科高校生用の二つの導入プログラムによる教育を行っていた工学基礎教育の大改革に着手しました。入学直後にプレースメントテストを行い、学生一人一人の学力を把握し、数学・物理・英語といった工学を学ぶ上で不可欠な科目については習熟度別にクラスを編成しました。

 それぞれの学力に応じた目標を設定し、ステップアップしながら着実に基礎学力が身につくようにしたのです。工業科・普通科いずれの出身に関わらず、教育の質を保証するために必要と考えたレベルの科目を必修化するとともに、レベル順に下位科目の修得を条件とする「履修縛り」を設けました。学生にとっては、わかるまで繰り返し学べるが、超えなければ次に進めないハードルを設けました。

 また、2学年秋学期から本格的に始まる専門科目に対応できるよう、これらの基礎科目には「クォーター制」を導入しました。その一方で、学修支援センターでさまざまな相談に応じ、適切な指導を行うチューターを相当数配置するなどセーフティーネットも充実させ、わかるまで徹底的に教えるという覚悟を全教職員に共有してもらいました。

「専門力」を社会に生かし人間中心の技術を生み出す

 ――日本工業大学では「実工学」を基本理念として教育を行ってきました。高い評価を得ています。

 本学が行ってきた教育は、日本の工業社会のなかでは非常に有用とされ、高い評価を得てきました。しかし、社会が多様化し、科学技術もグローバル化が進みました。また、飛躍的に高度化し、これからの技術者にはモノづくり技術の付加価値が求められるようになっています。

 このような社会の要請の変化に呼応するため、本学では今春から「建学の精神」を発展的に改定しました。伝統である「実工学」の理念に基づき、確かな「専門力」に加えて、豊かな「人間性」を備え、社会の発展に貢献できる次世代の科学技術を創造できる実践的技術者の育成を教育目標とし定めました。

 2021年度から、次の10年に向けた中期計画がスタートします。計画策定に当たっては、本学の校風でもある「仲間と一緒に“つくる”ことに夢中になれる」「手を動かしてアイデアを“カタチ”にできる」という特色をより強調していくことを心がけました。ただ、“カタチ”といっても、これまでのような具体的な「モノ」に限らず、サービスも含めた広い意味での価値を創造していこうという考えです。これは人に寄り添い、人に幸福をもたらすモノや価値を創造するという「デザイン思考」にもつながります。

 ――人に寄り添える技術者となるためには、在学中に学んだことを社会で生かすための経験を積むことが重要です。それをサポートする場として、「人と暮らしの支援工学センター」を立ち上げたそうですね。

 そうです。センターでは安全教育も踏まえ、高齢化社会を多職種で支援するヒューマンケア活動、ハンディキャップを持った人を支援するためのソフトやリハビリ器具の開発など多彩な取り組みを推進しています。

 人間中心の技術を考えるには、人の痛みや苦悩を共有できる人間性が欠かせないため、「暮らしの支援とエンジニアの協働」「地域活動リテラシー」という2科目を開講する予定です。この2科目を全学部・学科の学生が履修することで、専門性とともに、社会の課題解決に技術を生かす意識を早くから学生に植え付けたいと思っています。

 そうして「専門力を社会に生かす経験」のための体制を強化し、「学生を成長させる力のある大学」という本学の価値をさらに高めていきたいという抱負を持っています。

2018年にそれまでの工学部1学部から3学部体制にするとともに、工学基礎教育にも力を入れる日本工業大
2018年にそれまでの工学部1学部から3学部体制にするとともに、工学基礎教育にも力を入れる日本工業大

キャンパス

〒345-8501 埼玉県南埼玉郡宮代町学園台4-1

学生数

4208人(2020年5月1日現在)

学部

基幹工学部、先進工学部、建築学部

ホームページ

https://www.nit.ac.jp/

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