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関西学院大・村田治学長 理工系学部を再編・拡充 文理横断型の学びでイノベーション人材育成

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「神戸三田キャンパスを文理融合型の先進的なキャンパスにしたい」と話す関西学院大の村田治学長=兵庫県西宮市の関西学院大西宮上ケ原キャンパスで 拡大
「神戸三田キャンパスを文理融合型の先進的なキャンパスにしたい」と話す関西学院大の村田治学長=兵庫県西宮市の関西学院大西宮上ケ原キャンパスで
これまでの2学部体制から5学部体制に再編・拡充される関西学院大神戸三田キャンパス=兵庫県三田市で 拡大
これまでの2学部体制から5学部体制に再編・拡充される関西学院大神戸三田キャンパス=兵庫県三田市で

神戸三田キャンパスをリニューアル 2学部から5学部体制へ

 関西学院大が4月から神戸三田キャンパス(KSC、兵庫県三田市)にある総合政策学部と理工学部の2学部を再編・拡充し、5学部体制となる。情報通信技術の発展に伴い、知識集約型社会が進展する中、文理の枠を超えてイノベーションを起こす人材を育成しようという狙いがあるという。どんなキャンパスになるのか、村田治学長に聞いた。【中根正義】

 ――KSCは1995年、総合政策学部の拠点として開設され、昨年、25周年を迎えました。今回のリニューアルで、どんなキャンパスに生まれ変わるのでしょうか。

 総合政策学部は国際化や情報化に対応する学際的な学部として生まれました。今回の改革は、社会の急激な変化に対応できる人材の育成と、研究を推進するために行うもので、これまでの総合政策学部と理工学部の2学部体制から、5学部に再編・拡充します。複雑化する社会の中で、国境や文系・理系、大学と社会といった枠を超えた教育に取り組むことを目指しています。

 グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルといったGAFAの創業者たちは理系出身で、経営的な知識を加えることでイノベーションに結びつけてきました。そうした視点から、KSCでは総合政策学部にある経営学や知財、会計などの科目を履修できるアントレプレナー育成プログラムを、理学部を母体にして創設することにしています。これに日本IBMと共同開発した「AI活用人材育成プログラム」を組み合わせ、学生の起業をバックアップします。また、SDGsに関わる講座や、シリコンバレーでの海外理工学プログラムなど国際プログラムにも力を注ぎます。

 ――「Be a Borderless Innovator」(境界を越える革新者たれ)をコンセプトとして掲げています。

 世界は今、新型コロナウイルスの感染拡大といった深刻な課題に直面しています。医療保健分野だけでなく、経済循環をどう進めるかといった見地から、経済学や社会学の知見も求められています。分野を超えた連携によってこそ、社会変革がなし遂げられるのであり、KSCの再編・拡充は、まさにその点を踏まえて行われるものと言えるでしょう。

 コロナ禍もそうですが、私たちは今、第4次産業革命とも言われる時代に生きています。情報通信技術(ICT)の急速な発展により、膨大なビッグデータを人工知能(AI)が解析し、その結果を基にイノベーション(技術革新)を創出するというようなことが社会の中で日々起きています。

 一方で、温室効果ガス排出削減などの環境問題が深刻化し、各国が連携しなければ持続可能な発展は難しくなっています。国連が提唱している「持続可能な開発目標」(SDGs)は、まさにその点を踏まえたものなのです。国内に目を転じれば世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進み、地方創生という課題にも直面しています。本学は、そうした社会課題に真正面から取り組み、学生一人一人の能動的な学びに応えていきたいと考えています。

 ――今回設立される四つの理系学部の特徴を教えてください。

米国出身の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが全体設計に関わり、調和のとれた美しいキャンパスとして知られる関西学院大西宮上ケ原キャンパス=兵庫県西宮市で 拡大
米国出身の建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが全体設計に関わり、調和のとれた美しいキャンパスとして知られる関西学院大西宮上ケ原キャンパス=兵庫県西宮市で

 全体のコンセプトは「『持続可能なエネルギー』の研究を軸とする地球規模の課題解決」です。理学部では宇宙物理学の主要3分野である電波天文学、赤外線天文学、X線天文学を全てそろえています。天体望遠鏡を設置した建物を新設し、最先端の研究者が宇宙の謎に迫ります。工学部ではICTやAIなどを活用し、持続可能な社会の構築に必須となる知識を学ぶことができるでしょう。生命環境学部では環境や食料、健康などの課題に挑み、生命環境分野の未来を担う人材を育成します。建築学部では都市建築や都市デザイン、都市政策を学びます。都市政策は総合政策学部が科目提供を行うなど、人文社会科学の視点を取り入れます。

 本学の西宮上ケ原キャンパス(NUC)は、近代日本建築の父とも称されるW・M・ヴォーリズが全体設計をしました。調和の取れた美しいキャンパスで知られていますが、KSCもその精神を受け継ぎ、スパニッシュ・ミッション・スタイルで景観を整え、「全学一体の理念」を打ち出しています。つまり、景観や都市デザインの重要性を、キャンパスにいながらにして体感できるのです。そして、ヴォーリズゆかりの企業である近江兄弟社グループとは、ヴォーリズ建築に関する共同研究を行うために連携協定を締結しています。

企業や地元自治体との連携にも注力

 ――企業との連携にも力を入れているのですね。

 企業との連携では、昨年、大手アウトドア用品メーカーのトップブランド、スノーピークと包括連携協定を結びました。KSCは自然豊かな郊外型キャンパスです。敷地内にテントを常設し、キャンプの効能を科学的に検証するための共同研究や、環境問題解決のため、学生とスノーピークの社員が協力したマイボトルの開発など、さまざまなプロジェクトを立ち上げることにしています。

 また、地元の三田市との地域連携にも、これまで以上に力を入れることになるでしょう。三田市はベッドタウンとして発展してきた経緯がありますが、近年は急速な高齢化が進んでおり、都市再生などについて共同で取り組むことにしています。

 自然環境豊かで調和のとれたキャンパスで、これからの時代に求められる文理横断型の新しい学びや研究に、ぜひ触れてほしいと考えています。

 ■人物略歴

村田 治(むらた・おさむ)

 1985年関西学院大学大学院博士課程後期単位取得退学(経済学研究科専攻)。同年4月関西学院大学経済学部助手、89年4月助教授、96年4月教授。その後、教務部長、経済学部長、高等教育推進センター長を歴任。2014年4月から現職。経済学博士。

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