核兵器禁止条約の発効で核軍縮は動くのか 今夏に試金石 日本が抱えるジレンマ

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平和記念公園と原爆ドーム(奥)=本社ヘリから北村隆夫撮影
平和記念公園と原爆ドーム(奥)=本社ヘリから北村隆夫撮影

 22日に発効した核兵器禁止条約は、開発や保有、使用などを例外なく違法と定めた初の国際法規だ。だが、効力が及ぶのは現時点で50カ国・地域にとどまり、実効性には疑問符がつく。「核兵器なき世界」の実現に向けて、停滞する核軍縮は動き出すのか。

「3年内に100カ国・地域批准」包囲網戦略 分断解消へ今夏のNPT会議注視

 「小さな国が声を集めて条約を生み出したことが重要だ。南太平洋の国々は、核廃絶の願いを共有している」。南太平洋の島国・キリバスの元大統領、テブロロ・シト国連大使はそう語る。核禁条約を批准したのは中南米や南太平洋などの小さな国が多い。キリバスも人口は約12万人。1950~60年代に、米英による核実験が33回行われた。シト氏は「核廃絶のために一つになって仲間を増やしていく」と話す。

 米露英仏中などの核保有国や「核の傘」の下にある日本などに法的拘束力が及ばない以上、条約は実効性が乏しい。条約を推進する国やNGOは、それを前提に「核兵器は非人道的で絶対悪」とする国際的な規範意識を高めて、核軍縮を迫る「包囲網」を敷く戦略を描く。そのためには、批准国をどこまで増やせるかがカギを握る。

 核禁条約の批准を各国に働きかける国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の川崎哲・国際運営委員は「3年以内に100カ国・地域の批准を目指す。(締約国には他国に署名や批准を促す義務が定められており)それは可能だと思っている」と語る。現在の批准は51カ国・地域(ベナンは3月11日発効)。これが倍増すれば、国連加盟193カ国の過半数が核兵器禁止の意思を示すことになるからだ。

 だが道のりは険しい。世界の核軍縮は、核軍縮交渉を義務づける代わりに、米露英仏中の5大国に核兵器の保有を認める核拡散防止条約(NPT)が柱になってきた。核禁条約ができたのは、核保有国による核軍縮の停滞が続くことへの国際的な不満の高まりがあるが、核保有5大国は「安全保障上の課題を考慮していない。NPT体制も損なう」などとして背を向けている。

 バイデン米政権は21日、米露間の軍縮条約で唯一残っていた新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長を目指すと表明した。核軍縮をめぐる環境は改善に向かうとみられるが、米露に中国も巻き込んだ核軍縮の枠組み作りや、北朝鮮やイランの核開発問題なども抱える核保有国が、核兵器を一切禁止する核禁条約を認めるのは難しい。

 条約の推進国は「核禁条約は核保有国の核軍縮を後押しするもので、NPTを法的に補完するものだ」と訴えている。今後は、核軍縮の進展に向けて、核保有国も巻き込んだ対話の機運が生まれるかが焦点になる。

 試金石になるのが、…

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