高すぎる壁やるせなく 広河隆一氏の性暴力・パワハラ「遠い被害回復」

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広河隆一氏による性被害を含めたハラスメント被害告発を受け、月刊誌「DAYS JAPAN」は2019年2月号で謝罪を掲載した=2019年1月31日、宇多川はるか撮影
広河隆一氏による性被害を含めたハラスメント被害告発を受け、月刊誌「DAYS JAPAN」は2019年2月号で謝罪を掲載した=2019年1月31日、宇多川はるか撮影

 写真誌「DAYS JAPAN」元発行人でフォトジャーナリストの広河隆一氏から複数のスタッフが性暴力やパワーハラスメントを受けた問題で、発行元のデイズジャパン社に損害賠償請求していた被害者のうち、深刻な性暴力を受けた30代女性は一切の賠償金を受け取れなかった。被害が10年以上前のため法的な「時効」が壁となった。一方、時効期間内のパワハラ被害者の1人には請求額の一部が支払われたが、個人からも会社からも一切の謝罪はなく、むなしさを募らせている。性暴力を含むハラスメントが起きてしまった後、被害回復はどうあるべきか――。被害者たちが置かれた現状はそれを問いかけている。【宇多川はるか/統合デジタル取材センター】

被害発覚からの経緯は

 広河氏の性暴力やパワハラは2018年12月、週刊文春の報道をきっかけに発覚した。デイズ社が設立した検証委員会は、広河氏が04~17年に延べ少なくとも17人の女性スタッフに性暴力やセクハラを行ったことや、日常的に暴言を浴びせるなどのパワハラを働いていたことを認定した。

 問題発覚直後、広河氏は「私の向き合い方が不実であったため、このように傷つけることになった方々に心からおわびする」との謝罪コメントを公表。毎日新聞の取材に対しても「相手を深く傷つけ、自分がそのことに全く気づいていなかったことにがくぜんとした。長い間気づけなかったため(女性たちが)被害を訴えることが困難になり、沈黙の時間が続いたと思う」と自己批判していた。

 しかしその後は、検証委の調査などを通じ、「性的関係には合意があった」「思い出せない」「記憶の扉を開けるきっかけとなるカギが見つからない」との主張を繰り返している。

告発前にある高いハードル 

 検証委が被害認定した被害者の1人である30代女性は、10年以上前、デイズ社でアルバイトをしていた。フォトジャーナリスト志望だったこの女性はある時、広河氏から「写真を教えてあげる」とホテルに呼び出され、性行為を強要された上に裸の写真を撮影されたという。

 この女性は20年1月に同社に対し、慰謝料など約400万円の損害賠償を請求した。広河氏本人に訴えを起こすことは報復による2次被害の恐怖があったことに加え、「個人の問題に矮小(わいしょう)化しないで会社に責任をとってほしい」との思いから、対象を会社に絞った。被害者側の代理人を務める在間文康(ざいま・ふみやす)弁護士によると、他に2人がこの動きに続き、計3人が賠償請求した。

 だが、2カ月後の同年3月、…

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