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#自助といわれても

「まず自分で何とかしろと言われているようだ」。菅義偉首相が目指す社会像として「自助、共助、公助」を掲げたことに対して、そんな声が広がっています。自力ではどうにもならない困難を抱えた人たちの姿が、私たちにはどこまで見えているのでしょうか。現場の声に耳を傾けました。

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気づいたら全財産103円 42歳女性が「見えない貧困」に落ちるまで

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2020年9月の自民党総裁選立候補者討論会で「自助、共助、公助」と書かれたボードを手にする菅義偉氏=東京都千代田区の日本記者クラブで2020年9月12日午後1時3分、竹内紀臣撮影
2020年9月の自民党総裁選立候補者討論会で「自助、共助、公助」と書かれたボードを手にする菅義偉氏=東京都千代田区の日本記者クラブで2020年9月12日午後1時3分、竹内紀臣撮影

 「気がつくと、所持金は103円でした。4日の仕事始めに出勤する電車賃もなくなっていました」。短大卒業後、非正規雇用で働いてきた女性(42)は突然、自分とは関係ないと思っていた「リアルな貧困」に直面した。給料が安くても仕事を絶やさずにやってきた。でも40代になるとバイトの面接にすらなかなか呼ばれなくなってしまった。家賃の引き落とし日が迫るのが怖くて仕方がなくなった。「真面目に生きていきたいだけです。どうしてこんなことになったのでしょう?」。女性に声をかけると、こう聞き返してきた。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】

 夕暮れ時、人影が少なくなった会場を出ようとした女性が支援スタッフの男性から声をかけられていた。「野菜もあるよ、あ、ガスが止まってるんだったね」。女性ははきはきした声でお礼を伝えていた。記者と同世代に見えた。1月3日、東京都千代田区の聖イグナチオ教会で開催された「年越し大人食堂」の取材で、女性に声をかけてみた。

 「これ見てください。笑いますよね」。女性はショルダーバッグから長財布を取り出した。小銭入れを開けて、100円玉と1円3枚をジャラジャラと揺らしてみせた。…

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