大相撲から「街の法律家」へ 元力士、コロナ苦境の飲食店に寄りそう
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官公庁への書類の作成や提出を代理で行う行政書士に就いて3年になる斎藤拓也さん(39)。大相撲の元力士で、10年にわたる現役時代はけがに泣いた。就職活動の現実、2度の不合格……。第二の人生では「身近な街の法律家」としてある思いを胸に、土俵際で困っている人に寄り添う。【真下信幸】
「努力して自分を変えたかったんです」
「小規模事業者および一定要件を満たす特定非営利活動法人」「サプライチェーンの毀損(きそん)への対応に要する経費」。専門用語が並ぶ約80ページの文書を、大きな体をかがめながらパソコンに入力していく。新型コロナウイルスの感染拡大で売り上げが落ちた飲食店からの依頼が相次ぎ、補助金を申請する書類作りに余念がない。
「事業内容やコロナの影響、補助金の活用方法などを聞き、申請をサポートします。書き方次第で採択に影響するので、行政書士の手腕と機転が重要。依頼主から丁寧に聞き取り、読みやすく、誰もが納得する書類を作ることを心がけています」
指の関節は大きく腫れている。右耳も一部盛り上がった「ギョーザ耳」。激しいぶつかり合いを続けてきた力士の面影を残すが、過去の経歴に気づく人は意外と少ない。
「体重は現役時代の165キロから60キロほど落ちました。今の体形と力士が結びつかないようで経歴を話すと驚かれます。話のきっかけになるので、相撲取りで良かったと思っています」
高校で本格的に相撲を始め、専修大にスポーツ推薦で進学。「相撲をやり切りたい」と2004年3月、阿武松(おうのまつ)部屋に入門した。当時の親方は、現役時代に「白いウルフ」の異名をとった元関脇・益荒雄。しこ名は本名の「斎藤」から始めた。
「稽古(けいこ)はめちゃくちゃきつくて、毎日、逃げ出したくなるような気持ちでした。師匠も厳しい方で……。それでも、日々強くなっている実感があり、誰にも負けたくない気持ちで上を目指しました」
入門から約4年で力士として「一人前」と認められる関取(十両以上の力士)の一歩手前、幕下に昇進。しかし、10年の九州場所で悲劇が襲った。
「取組で…
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