- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
新型コロナウイルス対策で、政府は感染封じ込めに強制的な手段を使えるよう方針転換しようとしている。
感染症法とコロナ対策の特別措置法の改正案が閣議決定された。罰則の導入が柱で、政府・与党は2月上旬の成立を目指している。
菅義偉政権のコロナ対応は後手に回ってきた。改正案からは、罰則に頼って事態の打開を図ろうとする政府の思惑が透けて見える。
感染症法改正案では、宿泊施設や自宅での療養に応じず入院措置も拒否した患者に、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科す。
感染症法は患者への配慮を定めている。指示に従わなければ罰するというのは、人権尊重の基本理念に反するのではないか。特に身柄を拘束する懲役は行き過ぎだ。削除が必要だ。
政府は療養せずに出歩くケースが問題だというが、具体例がどの程度あり、感染拡大にどう影響しているのかは不明なままだ。
罰則導入が感染者への差別につながりかねないとの懸念も残っている。検査を避ける人が増えて、感染状況がつかみにくくなれば逆効果だ。
特措法改正案では、知事による営業時間短縮などの命令に応じない事業者への罰則を盛り込んだ。
緊急事態宣言の発令後は、50万円以下の過料を科せる。宣言前であっても、「まん延防止等重点措置」として30万円以下の過料を設けた。
にもかかわらず、重点措置実施の要件や事業者に命じる対策はあいまいで、政令や知事の権限に委ねられている。国会への報告も定めがなく、チェックする体制が十分でない。
感染症対策は政府が国民の理解と協力を得ることが欠かせない。
強制力を持つ罰則を導入しようとするのであれば、政府は根拠を示して必要性を説明しなければならない。罰則の抑制効果とデメリットを比較考量することも求められる。違反を確認するため、自治体が人手を割けるかどうかも不透明だ。
法案の成立を急ぎ、感染対策の失敗を覆い隠すようなやり方は論外だ。拙速を避け丁寧に審議することが、国会の責務だ。