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バスマットから考えるアスベスト問題

大手ホームセンターで販売のバスマットやコースターからアスベストが相次いで確認されました。この問題の本質に迫ります。

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バスマットから考えるアスベスト問題

「静かな時限爆弾」が身近に潜む脅威 石綿が規制をすり抜けた内幕は

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大阪府貝塚市のふるさと納税の返礼品になっていた、珪藻土のバスマット=同市提供
大阪府貝塚市のふるさと納税の返礼品になっていた、珪藻土のバスマット=同市提供

 昨年12月以降、大手ホームセンターで販売されていた珪藻土(けいそうど)のバスマットやコースターから強い発がん性のあるアスベスト(石綿)が相次いで確認された。身近にある日用品から突如として判明したため大きな関心を呼んでいるが、一連のケースは、私たちが暮らす社会に潜んでいる石綿の脅威のごく一部が偶然に可視化されたに過ぎない。背景に横たわる実態はより深刻だ。これまで石綿を巡る問題を継続して取材してきた記者が、バスマット問題を入り口に、3回に分けてこの問題の本質に迫る。初回は、石綿を含んだ製品が規制をすり抜けて販売された内幕について――。【柳楽未来/科学環境部】

 大手ホームセンター「カインズ」は昨年12月、2018年5月以降に販売された珪藻土のバスマットや、せっけんトレーなど計約29万点について基準値を超える石綿が含まれている可能性があるとして、回収を発表。「ニトリ」も16年以降に販売した同種製品約355万点の回収を決めた。いずれの製品も破損すれば石綿が飛散する恐れがあり、両社は使用中止を呼び掛けている。今年に入ってからは、100円ショップでも同様の問題が見つかった。

判明のきっかけは「ふるさと納税」

 今回、石綿の含有が確認されたバスマットなどは、現在の国の規制の下で「石綿は含まれていない」として流通していた。では、なぜこのタイミングで見つかったのか。それは決して、国が規制を強化したからでも、大手ホームセンターが率先して調査したからでもない。きっかけは、ある自治体の「ふるさと納税」だった。

 大阪府貝塚市は16年、市内の木工所が製造した、珪藻土が素材として使われたバスマットとコースターをふるさと納税の返礼品にすると決めた。珪藻という藻類の一種が堆積(たいせき)してできた珪藻土は、吸水性や吸湿性に優れているため、00年代中ごろからバスマットなどに利用され始め、徐々に人気が高まっていた。貝塚市によると、珪藻土入りのバスマットやコースターを返礼品に加えたのは貝塚市が全国の自治体で初めてだったこともあり、16年の開始から20年2月までにバスマット約1万5000枚、コースター約2500枚が出荷される「ヒット商品」となっていた。

 事態が変わったのは20年初め。木工所がバスマットなどの材料にした成形板の余りを廃棄しようとしたところ、ごみ回収業者から石綿が含まれていないか調査するように求められたのだ。地中から産出される珪藻土そのものには、石綿はほとんど含まれていないとされる。つまり、珪藻土自体に石綿の危険性が潜んでいるわけではない。しかし成形板には、珪藻土以外にほかの素材も混ぜられており、製造過程で石綿の混入が疑われるケースがある。

 市によると、木工所の調査結果では、国の規定である質量あたり0.1%を超える石綿は検出されなかったという。このバスマットが一般の市販品だったら、「石綿は含まれていない」としてそのまま流通し続けていただろう。ところが、ふるさと納税の返礼品になっていたこれらの製品は、ここで終わらなかった。

「ヒット商品」調べてみると……

 ふるさと納税は、住んでいる自治体とは別の自治体に寄付をして、そのお礼として地元の特産品などの返礼品を受け取れる仕組みだ。利用者にとっては、あたかも自治体が商品を取り扱っているように見えるため、自治体には利用者から商品に対するクレームが頻繁に寄せられる。

 そこで市は、木工所の検査の後に、「返礼品を扱う自治体として、慎重に対応すべきだ」として独自で再検査をすることにした。すると、バスマット…

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