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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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米国でスペインかぜが…

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 米国でスペインかぜが猛威を振るったのは禁酒法の施行前夜だった。感染防止で酒場の営業が禁じられ、禁酒運動に勢いがついた。一方、一部地域ではウイスキーが治療に有効と薬品扱いされた。医師の処方で飲酒する手法は禁酒法の時代にも続いた▲コロナ禍も飲酒のあり方を変えた。会合自粛やテレワークの導入で「帰宅前に一杯」の習慣がすっかり過去のものになった人も多いだろう。逆に家飲みの機会は増えた。昨年は飲食店向けのビールが減る一方、安い「第3のビール」が売れて販売量が逆転した▲ロックダウンが続いた欧米の調査でも家での飲酒量が増えた人が多い。不安やストレスから酒に頼ることもあるのだろう。家では時間の制限がなく、深酒になりがちという話も聞く▲酒は百薬の長か、命を削るカンナか。酒好きな上戸にとっては前者、下戸には後者といわれるが、飲み過ぎはやはり体に毒だ。世界保健機関(WHO)も過度な飲酒は免疫力を落とすと警告している▲禁酒法は密造酒を売るギャングの懐を太らせただけで失敗に終わった。飲酒の習慣がなくなることはあるまい。一方で責任ある飲酒が求められる時代だ。アサヒビールはノンアルコールやアルコール度数の低い商品を増やす方針を打ち出した▲コロナ禍が収まれば、苦境にある居酒屋にも客が戻るだろう。だが、飲み方は変わっていくのではないか。家飲みで妻や夫との会話の時間が増えたという人も少なくない。好ましい変化は定着させていきたい。

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