「夜の女王」を引退したオペラ歌手、森谷真理が封印を解く理由
毎日新聞
2021/1/26 15:54(最終更新 1/26 18:26)
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音楽演奏は楽器を使った「身体表現」である。中でも身体そのものを楽器とするオペラ歌手は、アスリートの要素を色濃く持ち合わせた存在だ。オペラの「競技性」を象徴する役どころが、モーツァルト晩年の傑作「魔笛」に登場する「夜の女王」であり、この役をこなせる歌手は「超絶技巧を持つ希少な存在」として引っ張りだこになる。天皇陛下の即位を祝う「国民祭典」(2019年)で「君が代」を独唱したソプラノ歌手、森谷真理(もりや・まり)さんは、世界中で歌い続けた「夜の女王」からの引退を15年に表明し、ずっと封印してきた。しかし21年に突如、封印を解くことにした。いったん外した自身の看板。再挑戦に至るまでの思いを、森谷さんに聞いた。
みんなが知っている超難曲
「夜の女王のアリア」はトヨタ自動車のミニバン「アルファード」のテレビCMなどでも使われた超有名曲。聞き覚えのある人は少なくないだろう。
演奏時間2時間余りの「魔笛」で、夜の女王の登場は3場面しかなく、計2曲のアリアを披露する。CMで流れたのは第2幕の「復讐(ふくしゅう)の炎は地獄のように我が心に燃え」だった。…
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