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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「浦安や春の遠さの白魚鍋」…

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 「浦安や春の遠さの白魚(しらうお)鍋」。水原秋桜子(みずはら・しゅうおうし)の句で、白魚は早春の季語、だが春は遠いという。冬景色の浦安で春を先取りする鍋を味わったわけだが、「春遠し」とは晩冬に春を待つ強い気持ちを表した季語である▲日脚が伸び立春も近づく中、なお寒気は厳しく、雪国から大雪の便りも届く。すぐそこまで来た春を待ちわびる季語「春近し」「春遠からず」と同じ気持ちを、逆説的に強調してみせる「春遠し」なのだ。ちょうど今の気分であろう▲北日本や日本海側はきのうから暴風雪となり、西日本にも寒気が流れ込んだ。だが暦の上では2月2日に冬の終わりとなる節分を迎え、翌3日は立春である。例年より1日早いのは暦の補正のためで、2日節分は124年ぶりという▲いつもの年にまして春が待たれるのは、冬の寒さと乾燥を機に感染が広がった新型コロナウイルス禍のせいである。ちなみにきょうから1カ月間の長期予報では、気温は平年より高めだが、寒気の流入もあって寒暖差は大きいという▲今春の桜の開花予想もすでに発表され、日本気象協会によれば全国的に平年より早い。トップは福岡の3月19日、東京は記録的に早かった昨年の同14日より遅いが平年より早い同22日とか。そのころ感染状況はどうなっているだろう▲「叱(しか)られて目をつぶる猫春(はる)隣(どなり)」は久保田万太郎(くぼた・まんたろう)の句。春隣は、やはり春を待つ晩冬の季語である。新規感染者減がみられる今を感染収束の春の隣とすることができるのか。問うのも答えるのも私たちだ。

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