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江國香織・評 『ミラクル・クリーク』=アンジー・キム著、服部京子・訳

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『ミラクル・クリーク』
『ミラクル・クリーク』

 (早川書房・2420円)

善意の人々によるミステリー

 ヴァージニア州のある町で、放火殺人事件が起る。放火されたのは“ミラクル・サブマリン”という名の治療施設で、韓国人の夫婦が経営していた。カプセルに入って百%の純酸素を吸うことによって、自閉スペクトラム症、脳性麻痺(まひ)、不妊症、クローン病、神経症などに効果があるとされるこの施設の火事によって二人が亡くなり、三人が大怪我(おおけが)を負う。そこまでわずか九頁(ページ)(全体では五百頁近い本)。そこから物語は一年後に飛び、裁判に突入する。著者は元弁護士だけあって、法廷シーンおよびその裏でくりひろげられる弁護側検察側双方の仕事ぶりのリアリティは見事。

 裁判だからすでに被告が存在し、それはエリザベスという女性なのだが、彼女がほんとうに犯人なのかどうかはわからない。施設には保険がかけられていて、保険金は当然オーナー夫妻のものになるのだし、そこでの治療に反対している抗議者たちもいて、患者同士のいざこざもあり、あれもありこれもある。

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