特集

第103回全国高校野球選手権

第103回全国高校野球選手権大会(8月10~29日)の特集サイトです。

特集一覧

2年ぶりセンバツ 震災10年、東北初Vを

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
仙台育英のグラウンドに掲げられている3年生世代のスローガン=宮城県多賀城市で2021年1月29日午後4時41分、和田大典撮影 拡大
仙台育英のグラウンドに掲げられている3年生世代のスローガン=宮城県多賀城市で2021年1月29日午後4時41分、和田大典撮影

 今年こそ夢舞台へ――。29日開かれた第93回選抜高校野球大会の選考委員会で、32校の出場が決まった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で前回大会が中止となった2年ぶりの「春」。コロナ禍を乗り越えて切符をつかんだ選手たちは、春夏の甲子園大会を奪われた先輩たちの思いも背負い、静かに闘志を湧き上がらせた。

 大会は3月19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。

先輩の思い引き継ぎ 宮城・仙台育英

 2年連続14回目の選出となった仙台育英(宮城)のグラウンドには、コロナ禍で中止となった昨年のセンバツに出場するはずだった3年生世代のスローガンが今も掲げられている。ナインは先輩から引き継いだ思いを胸に、東日本大震災から10年となる節目の今年、被災県の代表校として優勝旗を持ち帰るつもりだ。

 「熱夏(ねっか)伝承」というスローガンは昨夏の甲子園も中止が決まった後に作られた。3年生は県独自大会やセンバツ交流試合で集大成を見せ、新チームへと移行する際、前主将の田中祥都(しょうと)さん(3年)は島貫丞(じょう)主将(2年)にこう声を掛けた。「お前たちは日本一になるんだ」。3年生40人の夢は、共に汗を流した後輩62人に託された。

 悔しい思いをしたのは3年生だけではない。昨年の秋季大会で背番号1をつけた伊藤樹(たつき)投手(2年)は一昨年の夏、当時1年生ながら甲子園のマウンドに立ったが結果を残せず、昨年はコロナ禍により雪辱を果たす舞台を奪われた。今回、再びセンバツ出場の切符を手にし「一昨年取れなかった1勝を挙げたい」と胸を躍らせる。

 昨年、史上初のセンバツ中止が発表されたのは、9年前に震災があった3月11日だった。震災当時、学校周辺は冠水し、しばらくは野球どころではなかった。部員も高齢者宅の後片付けを手伝うなど、ボランティアに取り組んだ。震災発生から10年を迎えた直後に開幕する大会に向け、須江航(わたる)監督(37)は「東北各地から選手が集まるチームだからこそ、東北初の(センバツ)優勝にかける思いはどこよりも強い」と力を込める。

 吉報が届いた29日、昨夏までエースナンバーをつけていた向坂(むかいざか)優太郎さん(3年)は「島貫を中心にまとまってしっかり準備をすれば勝ち上がれる」と後輩にエールを送った。島貫主将はスコアボード下のスローガンを見つめ、「先輩の分まで優勝を目指す」と誓った。【滝沢一誠】

選出の大阪桐蔭、校内で集団感染

 2年連続12回目のセンバツ切符をつかんだ大阪桐蔭だが、生徒の間で新型コロナウイルスの集団感染が発生し一部コースが臨時休校となっているため、硬式野球部の選手たちは29日、姿を見せなかった。同校によると、保健所の指導を受けながら感染者への対応や感染防止策を進めているという。今田悟校長は「生徒の人権や個人情報を保護するため」として、硬式野球部員に感染者がいるかは明らかにしなかった。

 一方、近畿の補欠校に選ばれた龍谷大平安(京都)は29日、硬式野球部7人の感染が判明したことを公表。全員が軽症か無症状だったが18日から練習を中断しているという。【荻野公一】

 ◆21世紀枠

センバツ出場が決定し、笑顔で拳を握る三島南の選手たち=静岡県三島市で2021年1月29日、宮武祐希撮影 拡大
センバツ出場が決定し、笑顔で拳を握る三島南の選手たち=静岡県三島市で2021年1月29日、宮武祐希撮影

野球教室開催積み重ね 静岡・三島南

 三島南(静岡)の選手たちはグラウンドで、持山育央(やすひろ)校長から吉報を伝えられた。21世紀枠での甲子園初出場に、目を潤ませる選手もいた。

 昨年、創部100年を迎えた伝統あるチーム。伊藤侍玄(じげん)主将(2年)は「選ばれたことを自信にして頑張りたい」と喜んだ。

 「地域の野球人口が減っている現状を何とかしたい」。2013年に赴任した稲木恵介監督(41)が考案したのが、地元の幼稚園児や小学生を対象にした野球体験会などの開催だ。14年末から計31回を数え、参加者は1000人を超える。

 園児らと目線の高さを合わせ、優しく野球の楽しさを伝える選手たち。「将来は三島南で野球がやりたい」と親しむ子どもたちにとって地元のヒーローだ。

 練習ではリアルタイム映像でプレー動作を確認したり、スイングスピードを数値化したりとICT(情報通信技術)を駆使。昨秋の県大会で4強入りし、今回の甲子園切符につなげた。

 主軸の前田銀治選手(2年)は「先輩から受け継いできた活動が評価されてうれしい」。稲木監督も「今できることを一日一日、精いっぱいやるだけだ」と意気込んだ。【深野麟之介】

センバツ出場が決定し、涙を流す八戸西の選手たち=青森県八戸市で2021年1月29日午後3時40分、吉田航太撮影 拡大
センバツ出場が決定し、涙を流す八戸西の選手たち=青森県八戸市で2021年1月29日午後3時40分、吉田航太撮影

支援学校との交流も力 青森・八戸西

 21世紀枠での出場が決まった八戸西(青森)は、学校創立の1975年に野球部も創部されて以降、甲子園出場は春夏通じて初めてとなる。

 今年のチームは積極的な打撃が持ち味の一つ。バッティング練習では、交流を続ける八戸高等支援学校の生徒が心を込めて補修するボールを使っている。

 同じ青森県立の両校の交流は2018年に就任した小川貴史監督(37)がきっかけ。小川監督は八戸西野球部OBで、現在は支援学校に教諭として勤めながら母校で指導を続けている。

 19年4月からは、八戸西の選手たちが支援学校の運動部員にストレッチを教える一方、支援学校の生徒らが作業学習の時間に八戸西野球部のボールを週に100個程度、ビニールテープで一つ一つ丁寧に巻いて補修している。支援学校1年の小貫晃輝さん(16)は「八戸西野球部に頑張ってほしいという思いで(ボールを)直している」と語る。

 八戸西の宮崎一綺(かつき)主将(2年)は「陰で支えてくれた人たちの思いも背負い、一生懸命プレーしたい。甲子園ではベストパフォーマンスで臨みたい」と話す。交流する支援学校の生徒らの思いも胸に、必勝を誓う。【南迫弘理】

あわせて読みたい