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2回目となる緊急事態宣言が出され、飲食店が閉店時間の繰り上げなどにより経済的に苦しいという報道をよく耳にする。だが、苦境にあえぐのは彼らだけではない。フリーランスとして活動している大道芸人たちもそうだ。今回の緊急事態宣言でイベントの中止が相次ぎ、収入の柱を失っているという。「コーンジャグリング」というパフォーマンスを得意とする男性に現状を聞いた。【大野友嘉子/統合デジタル取材センター】
病にコロナ…休業続き
<ヘブン活動は休止延長になりました。2月7日まで。ふっゆやーすみ! ふっゆやーすみ!>
このツイッターの書き込みをしたのは、大道芸人「おろしぽんづ」さんこと、山口一也さん(32)。投稿日は、緊急事態宣言が再発令された1月8日だ。
山口さんは、東京都の審査をパスした「ヘブンアーティスト」に認定されている。ツイッターにあった「ヘブン活動」とは、このアーティストたちが、都が指定する公園や施設などでパフォーマンスを披露することをいう。山口さんは会場の一つに指定されている上野公園を「ホームグラウンド」にしているが、今回の緊急事態宣言の発令に伴い、都はヘブンアーティストの活動中止を決めた。
ツイッターの文言は一見すると明るく前向きだが、電話をしてみるとどこか力のない声が返ってきた。「今はとにかくやれることをやるしかないです」
私が山口さんに初めて会ったのは、2020年11月下旬。東京・明治神宮外苑の一角で行われた野外ショーだった。アフロヘアに、黒色のシャツとズボン。マスクは黄色と黒色のしま模様で、まるでトラみたいだった。
そんな彼から繰り出される「コーンジャグリング」という大技。道路でよく見かける三角形の「ロードコーン」を、お手玉をするようにいくつも同時に宙に放り投げる大道芸だ。1本1キロもあるというから、さぞ力が必要に違いない。聞けば身長185センチ、体重98キロという立派な体格。あれだけの力技を繰り出せる理由が分かる。コロナ禍で観客は7~8人と少なかったが、一眼レフで熱心に撮影する「追っかけ」ファンの姿もあり、彼の人気ぶりがうかがえた。
山口さんは大学時代、プロジャグラーのショーを見たことがきっかけで、ジャグリングに夢中になった。卒業後に一度就職したがプロになる夢をあきらめられず、2年間勤めて退職。12年にデビューし、大道芸の大会で優勝するなど、順調にキャリアを積んでいった。
だが19年12月、褐色細胞腫が見つかった。「希少がん」の一つとされ、高血圧や頭痛など多様な症状が出る病という。まだ自覚症状はなかったが、手術で腫瘍を取り除く必要があった。
20年3月に手術を受け、医師に「術後3カ月は安静に」とアドバイスされたが、仕事を休めば収入に大きなダメージが出る。迷った末、忠告を半ば無視して5月に復帰する計画を立てた。
術後の体調は悪くなかったが、4月に政府が緊急事態宣言を発令すると、各地でイベントが次々と中止されたため、復帰計画は狂った。特に5月のゴールデンウイークは例年ならば各地のイベントに出演する書き入れ時なのだが、仕事はゼロに。ようやくショーに戻ったのは、初秋を迎えた頃だった。
19年には計552回ショーを行ったが、20年は200回ほどにまで減った。これまでの…
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