特集

ミャンマークーデター

ミャンマー国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏らを拘束。市民や国際社会からは抗議と批判が相次いでいます。

特集一覧

何がミャンマー国軍をクーデターに駆り立てたのか じり貧と墓穴、消えた与党の旗

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷
軍事クーデターが起きたミャンマーの最大都市ヤンゴンで、車上から国軍などの旗を振る人々=2021年2月1日、AP
軍事クーデターが起きたミャンマーの最大都市ヤンゴンで、車上から国軍などの旗を振る人々=2021年2月1日、AP

 ミャンマー国軍が1日、アウンサンスーチー国家顧問兼外相らを拘束し、実権を掌握した。各国が新型コロナウイルスの対応で内向きとなる中でのクーデター。その背景を追った。

国軍の政治関与は保障されているが…

「有権者リストには深刻な不正があった」。国軍は1日、アウンサンスーチー氏率いる与党・国民民主連盟(NLD)が圧勝した2020年11月の総選挙結果にあらためて強い不満を表明した。そして、国軍が「自由で公正な選挙」を実施すると訴えた。

 国軍がクーデターを強行した背景には、今後は選挙を通じた政権奪取がますます難しくなるとの焦りがあったとみられる。実際、ミャンマーの少数派イスラム教徒「ロヒンギャ」の問題を巡り、国際社会から指弾された国軍の影響力は、じり貧の状況にあった。

 軍政時代の08年に制定された現行憲法は、上下両院の25%を軍人に割り当てると規定するなど、国軍の政治関与を保障。また、憲法上、国家非常時には全権が国軍最高司令官に委譲される仕組みだ。その一方で、改憲には両院の75%を超える賛成が必要で、国軍の同意が絶対条件となっている。

 だが、スーチー氏は少数民族武装勢力との和平と、憲法の改正を公約に掲げてきた。NLDは20年に「軍人枠」縮小案や改憲要件の緩和案なども憲法改正の審議で提案した。

 いずれも否決されたが、NLDが総選挙での圧倒的支持を受けて政権2期目に入ることで、改憲圧力が高まることは避けられない情勢にあった。

狭まりつつあった資金源の包囲網

 また、ロヒンギャへの迫害を巡り、国連人権理事会の調査団は19年に国軍系企業に金融制裁を科すよう求めた。調査団によると、国軍系の2社は宝石の取引やビール製造など120ものビジネスを展開。外国との合弁企業も設立し、その多大な収益がミャンマーでの国軍の地位を高めていると指摘していた。資金源の包囲網も狭まりつつあった。

 20年の総選挙は、2大公約や経済面などに目立った成果を上げられなかったNLDが、議席を減らすというのが大方の予想だった。ところが、国軍は投票日の直前に「選挙運動に不正がある」と主張し介入を示唆。「国民が危機感を覚え、反国軍感情が投票率を高めて浮動票がNLDに流れ、圧勝につながった」(ヤンゴンの外交関係者)。

 自ら墓穴を掘った格好だった国軍は、総選挙後初めての議会が招集される予定だった1日早朝、クーデターを決行した。国軍報道官は1月26日の記者会見でクーデターの可能性を聞かれ、こう答えた。「軍は憲法を含む既存の法律を順守する。(可能性は)あるともないとも言えない」【バンコク高木香奈】

「クーデターは何の利益ももたらさない」

 「自分もまもなく拘束されるので、その準備をしている」。1日午前6時ごろ(日本時間同8時半ごろ)、…

この記事は有料記事です。

残り2127文字(全文3276文字)

【ミャンマークーデター】

時系列で見る

次に読みたい

あわせて読みたい

注目の特集