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日本の昔の物語から、その当時の社会に思いを馳(は)せてみる。
たとえば平安時代の『伊勢物語』や『源氏物語』からは、マッチョ感、つまり「強い男」的な要素はあまり感じられない。当時も現代と同じ男性優位の社会だが、出てくる人々は基本的に恋愛ばかりして、頻繁に袖を涙で濡(ぬ)らしている。会ったこともない女性に、噂(うわさ)だけで恋をして泣いた時代である。
対外国に関しても、流行の先端地、みたいな捉え方をしている。もっと昔の時代を描いた『日本書紀』にも外国から日本に帰化した人たちの言及があり、そこに変なこだわりはない。というのも当然で、別に日本人だけが特別にニホンザルから進化したわけではなく、いま日本人と呼ばれる人は全員、半島や大陸、南のオセアニア地方などなど、つまり全員がよそから来た人たちの子孫である。全員がそうである。
でも鎌倉時代に入ると、やや様子が変わってくる。もちろん明確にここから変わったとは言えないけど、説話集の『宇治拾遺物語』には、いわゆる「日本スゴイ」物語が少し入っている。他国を貶(おとし)め日本は凄(すご)い、と言う、現代に氾濫しているあの惨(みじ)めな「商売」が…
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