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コロナ関連法の改正 罰則でなく支援を前面に

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 新型コロナウイルス対策の特別措置法と感染症法の改正案が国会で可決され、成立した。

 営業時間短縮や休業の命令に応じない事業者は、特措法で過料が科される。入院を拒否した患者に対しても、感染症法で罰則が設けられた。

 私権の制限を伴う重い法改正にもかかわらず、衆参両院での審議はわずか4日間にとどまった。自民党と立憲民主党が審議を前に修正内容で合意したためだが、議論は不十分で、多くの問題が積み残された。

 とりわけ懸念されるのは、時短などの命令に応じた事業者への財政支援が具体的に明記されていないことだ。両党の合意に基づき、国会では「経営への影響の度合いなどを勘案する」との付帯決議が採択されたが、政府は一貫して曖昧な答弁を続けている。

 事業規模や売り上げの減少に応じた支援が必要だ。政府が公平性に配慮した支援策を用意し、事業者が応じやすい環境を作ることが不可欠だ。

 感染症法では、事前の協議で懲役や罰金という刑事罰は削除されたが、行政罰の過料は残った。

 子育てや介護など家庭の事情で入院できない人もいる。罰則の適用は慎重でなければならない。政府はどのような理由があれば罰則の対象にならないのかを速やかに明確にし、国民の不安を解消する責任がある。

 罰則を導入することにより、感染者への差別や偏見を助長する恐れがある。検査を避ける人が増えることも懸念される。

 過料を科す上での手続きは、保健所が担う。だが、本来は住民に寄り添って健康を守るのが役割だ。住民との信頼関係が損なわれれば、日々の業務にも支障が出かねない。

 改正特措法では、緊急事態宣言が出ていなくても知事が時短などを命じられる「まん延防止等重点措置」が設けられた。しかし、発令要件や要請内容は曖昧だ。政令で定めるというが、国会審議でも明確にならなかった。恣意(しい)的な運用への歯止めが必要だ。

 コロナ対策は、国民の理解と協力が前提になる。きめ細かな支援や配慮を欠いたまま、罰則頼みで進めることは許されない。

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