新START巡り、交錯する米露の思惑 5年延長の背景に米中の「持久戦」
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米国とロシアは3日、新戦略兵器削減条約(新START)の5年延長の手続きを完了した。オバマ元米大統領が掲げた「核なき世界」を引き継ぐバイデン政権と、米国との戦略核の均衡維持をもくろむプーチン露政権の思惑が一致した形だが、課題は山積している。【ワシントン鈴木一生、モスクワ前谷宏、北京・河津啓介】
「5年は100%、ロシアの立場に合致している。重大な外交的成功だ」。ロシア外務省で新STARTの延長交渉を担当するリャプコフ外務次官は1月27日、延長に関する上院の審議で声を弾ませた。前日には米露首脳が電話協議し、5年延長の方針で原則合意していた。
新STARTは、配備する戦略核弾頭数とともに運搬手段の総数・配備数に上限を設ける。国防予算や通常戦力で米国に劣るロシアにとって、数千キロ離れた相手国の都市や軍事施設を直接攻撃できる戦略兵器の均衡維持は、米軍の行動抑止のために必要不可欠だ。軍拡競争による財政負担の回避もできる。
そのため、ロシアは当初から最長の5年を求めてきた。これに対し、トランプ前政権は米露に限った軍縮の枠組みに不満を示し、軍事力を急速に拡大する中国を加えた新たな枠組みの構築を主張。双方の訴えは平行線をたどり、交渉は暗礁に乗り上げた。
条約の失効を危惧したプーチン露大統領は2020年10月、無条件での1年間延長を提案するなど譲歩も見せている。しかし、トランプ前政権は条件として全核弾頭の凍結と検証を突きつけるなどし、交渉は再び頓挫。プーチン政権は、延長に前向きなバイデン政権誕生まで様子見を決め込んだ。
バイデン政権にとっての問題は延長幅だった。政権内では、ロシアに対する「将来の軍備管理交渉のテコ」として、暫定的に1~2年の延長も検討された。だが、1月20日の政権発足から16日後に迫る失効期限を前に時間的余裕もなく、戦略核兵器を巡る状況の安定化を最優先して、5年に落ち着いた。
最大限の延長はバイデン政権にとってもメリットは大きい。条約は互いに年最大18回の査察やデータ交換などの検証措置を定めている。戦略核兵器の透明性を確保し、双方の疑心暗鬼を防ぐ狙いがある。ブリンケン米国務長官は3日付の声明で「ロシアの核戦力態勢の深い洞察を得られる」と効果を説明している。
更にバイデン政権にとって喫緊の課題は、新型コロナウイルスの感染拡大や停滞する国内経済への対応だ。コロナ対策の費用がかさむ中、軍拡競争による国防費の膨張は避けたいのは米国も同じだ。政権1期目の4年間で、国内問題の対応と同時並行で条約の失効期限に追い立てられることもなく、今後の協議に腰を据えて取り組める。
しかし、結果的には…
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