「移動の自由奪われた」車椅子の原告、吉田さんが訴え JR駅無人化訴訟・初弁論

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JRの駅無人化を巡る第1回口頭弁論には車椅子利用者や盲導犬同伴者も傍聴に訪れた=代表撮影 拡大
JRの駅無人化を巡る第1回口頭弁論には車椅子利用者や盲導犬同伴者も傍聴に訪れた=代表撮影

 JR九州が合理化などを理由に進めている駅無人化計画は、障害者の移動の自由を妨げているとして、大分市で車椅子生活をしている男女3人が同社に1人当たり11万円の損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、大分地裁(府内覚裁判長)であった。車椅子で出廷した原告の一人、吉田春美さん(67)は「移動の自由を奪われて精神的苦痛を感じている」と意見陳述で訴えた。JR九州側は争う姿勢を示した。

 原告は、大分市在住で脳性まひがある吉田さんと宮西君代さん(58)、脊髄(せきずい)損傷で障害がある五反田法行さん(36)の3人。いずれも移動には車椅子が欠かせず、鉄道を利用する際は駅員らがいる駅で、誘導や乗降時のボード設置などで補助を受けている。一方、JR九州は遠隔操作システムを導入し、都市部での駅の無人化を進めている。

 この日の法廷では、吉田さんが車椅子で出廷。意見陳述の冒頭、吉田さんは口にくわえた棒で自作の50音表の文字盤を一文字ずつ指し示しながら「JRの線路が全国各地につながっているように、駅員を残してほしい気持ちも全国各地一つになってつながっている」と訴えた。

JR駅の無人化を巡る訴訟の第1回口頭弁論のため大分地裁に向かう原告や支援者ら=大分市の同地裁前で2021年2月4日午後2時11分、河慧琳撮影 拡大
JR駅の無人化を巡る訴訟の第1回口頭弁論のため大分地裁に向かう原告や支援者ら=大分市の同地裁前で2021年2月4日午後2時11分、河慧琳撮影

 その後の陳述はヘルパーの女性が代読。無人駅の利用の際には車椅子のため前日予約しないと電車が利用できないことや、当日の時間変更ができなかった経験などを紹介。「健常者には対応するが、車椅子障害者には対応しない(JRの姿勢は)障害者差別だと感じた」と訴えた。

 訴状などによると、原告は、利用者の多い駅でも無人化を進め、主要駅にオペレーターを常駐させて障害者の鉄道利用時は事前予約を必要とさせるJR九州の対応は、障害者差別解消法が求める社会の壁を取り除くための「合理的な配慮」を欠いていると主張。さらに、憲法で保障された移動の自由を妨げる不法行為だと訴えている。

 JR九州側は「人口減少や少子高齢化に伴い効率的な運営が必要。障害者を排除する意図はなく、相応の合理的な配慮をしている」などと反論した。【河慧琳】

補助を受けて車椅子のままホームからJRの車両に乗り込む吉田春美さん=大分市の大分駅で2020年9月12日午前11時49分、河慧琳撮影 拡大
補助を受けて車椅子のままホームからJRの車両に乗り込む吉田春美さん=大分市の大分駅で2020年9月12日午前11時49分、河慧琳撮影

吉田春美さんの意見陳述書全文

 JRの線路が全国各地につながっているように、駅員を残してほしい気持ちも全国各地一つになってつながっています。最後まで諦めないで良い答えが聞けるように、明るく元気に楽しく闘う決意です。

 僕は、電車に乗って移動することが大好きです。電車に乗って、楽しそうな顔の僕を見て、人工呼吸器を付けていても、電車に乗って遊びに行くことも、会議に出席することもできるんだと思う人が、増えることを望んでいます。

 残念ですが、一度も電車の中で人工呼吸器を付けた人に出会ったことがありません。

 そんな中で、無人駅が増えることは、人工呼吸器ユーザーを含む障害者の社会参加の機会を狭めることになります。駅員がいなくなって不自由や不便、不安を感じるのは、車椅子障害者の僕だけではないという思いから、「だれもが安心して暮らせる大分県をつくる会」やJR駅無人化反対集会など、いろんなところで、駅の無人化反対に対する気持ちを話したり、駅の無人化反対署名7万3113筆をJR九州大分支社に届けたりしました。しかし、「重く受け止める」という言葉だけで、駅の無人化計画を中止する気持ちを少しも感じられません。

 諦めてこのまま黙っていたら、既に無人化された三つの駅に続いて、残る五つの駅(高城駅、鶴崎駅、大在駅、坂ノ市駅、中判田駅)も無人駅にされてしまう。何とかして残る五つの駅の駅員は、残してもらいたい。そして、前日午後8時までの事前予約をしなくても、当日でも対応してほしい――そんな思いから、駅無人化反対訴訟への参加を決意しました。

 2時間前の乗車時間変更や乗車駅の変更ができないなどの不便や移動の自由を奪われて精神的苦痛を感じている人たちは、障害者だけではありません。

 「障害者は素直に反対を言えてよいなぁ」と言われますが、家族の仕事の関係など、あれこれ気を使って、反対を意思表示できない現実もあります。その人たちの悔しい思いも力に、先頭に立って闘うのも、僕の役目と思います。

 高城駅を起点に利用した体験をいくつかお話しします。

 臼杵駅と上臼杵駅を利用した時のことです。臼杵駅で降りる時は、1番ホームで、そのまま改札口から外に出られましたが、高城駅に帰る時は、臼杵駅の2番ホームに行くのに階段を上り下りすることは無理で、仕方なく、上臼杵駅まで歩いて行きました。上臼杵駅には駅員がいましたが、乗降スロープが無くて困りました。

 そこに下校途中の商業高校の男子学生3人が通りかかったのを見た駅員が呼び止めてくれたので、楽々と電車に乗ることができました。3人の高校生は、知り合いのおじさんに頼まれたような感じで、優しく助けてくれました。

原告の一人として意見陳述した吉田春美さん=代表撮影 拡大
原告の一人として意見陳述した吉田春美さん=代表撮影

 2019年11月23日、友人宅に福祉タクシーで行って、帰りは敷戸駅から電車で帰る予定でしたが、敷戸駅には駅員がいないため、SSS(スマート・サポート・ステーション)に介助依頼の電話を乗車時刻の約2時間前にしました。すると、「了解しました」との返事をもらったのですが、僕が「車椅子です」と伝えた途端に、「人がいなくて行けない」「前日の夜8時までに予約しなければ対応できない」という返事に変わりました。

 健常者には対応するが、車椅子障害者には対応しないという障害者差別を感じました。当日の利用にも対応するというのは信用できないと、この時に思いました。

 また、エレベーターの設置に関しても、鶴崎駅のエレベーターは、僕のリクライニング車椅子1台と、小柄なヘルパー1人がようやく入る使いにくい物です。このような状況で駅を無人化することが、車椅子障害者の駅の利用を阻むということは容易に想像できると思います。

 19年12月11日、無人化された大分大学前駅を利用しました。駅舎の入り口からホームまでスロープになっています。ホームまで下りる時に、僕は楽に感じましたが、ホームからスロープを見上げたら、自走車椅子では疲れると思いました。

 発車まで1時間あったので、一駅手前の敷戸駅まで散歩して乗車しようと思い、SSSに電話をしましたが、「既に大分大学前駅に向けて担当者が出発したので、駅の変更はできない」という融通の利かない返事だったので、仕方なく大分大学前駅で待つことにしました。そして、発車40分前に2人の職員が車で到着しました。

 20年12月23日、高城駅から敷戸駅を往復した時のことです。前日22日の午後4時35分。SSSに予約の電話をしました。

 行き先から帰りの時間までを伝えると、SSS職員は確認の復唱をして、時間に間違いないかを調べた上で、午後5時ごろに折り返しの電話をくれるとのことでしたが午後5時15分を過ぎても、折り返しの電話がありませんでした。再度、SSSに電話をして時間の確認をし、念のため、11時42分発に乗れなかった場合、11時56分発に乗ってもよいか尋ねたら、「時間変更は前日ならよいが、当日(23日)は困る」という返事でした。

 仕方なく42分発に乗ると応じましたが、再度、電話をしてきて、時間の確認をするという、融通の入り込めない対応でした。これでは、当日の時間や駅の変更どころか、当日の受け付けもできないことを実感しました。でも、敷戸駅に来たSSS職員は、ごみを片付けながら、乗車時間を一つ早くしてもよいようなことも話してくれました。

 最後になりますが、国鉄時代の大分駅に移動式の階段昇降機が設置されたことを思い出しました。その当時、「大分の障害者問題を考える会」と「大分大学障害者問題研究会」で歩独鞭智野(あどべんちゃー)案内本(がいど)を作るために大分駅をはじめ、大分市街地の商店やホテルなどのトイレや階段の調査をしていました。それを見ていた肢体不自由児父母の会の方々が大分駅に階段昇降機設置の要望をして実現したと記憶しています。

 そのころの僕は歩けていましたから、昇降機を使ったことはありませんでしたが、車椅子の人が利用しているのを見て、「便利だなあ」と思いました。

 また、国鉄からJRになって、一つだけ良くなったことは、100キロメートルを超えないと、障害者割引(半額)にならなかったのが、今は、高城駅から大分駅に行くのも半額です。ヘルパーさんの分を入れて1人分の運賃ですから、経済的な面では、移動しやすくなりました。

 今後もJR九州の電車に乗って社会参加活動を続けたいと思います。そのためにも、高城、鶴崎、大在、坂ノ市、中判田の5駅の無人化計画の白紙撤回を強く求めて、発言を終わります。

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