特集

森五輪組織委会長辞任

東京オリ・パラ組織委員会の森喜朗会長が女性蔑視発言から辞任。五輪憲章にも背く発言に、国内外から批判が集まりました。

特集一覧

#五輪をどうする

「コロナ禍でのオリンピック開催は現実的でない」 尾崎正峰・一橋大教授

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷
尾崎正峰・一橋大教授=本人提供
尾崎正峰・一橋大教授=本人提供

 「震災からの復興を世界に発信する」だの「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しに」だの、東京五輪の「大義名分」がころころ変わってきた。東日本大震災もコロナ禍も東京が誘致活動に乗り出した時点ではいずれもなかったものだ。では、何のための五輪なのか。開催に突き進むべきなのか。地域スポーツ振興について長年研究し、五輪に関する論考も多い尾崎正峰・一橋大教授(スポーツ社会学)に聞いた。【聞き手・金志尚/統合デジタル取材センター】

大会開催は「ムーブメント」の一つ

 ――コロナ禍での五輪開催は現実的ですか。

 ◆テニスの全豪オープンに出場する錦織圭選手が現地のホテルで2週間の隔離を余儀なくされました。大会側が用意したチャーター便の同乗者から新型コロナの陽性反応が出たためですが、このケースが現状をよく表していると思います。一つの競技で出場者数が限られる大会ですら、このありさまです。競技数も出場者数も桁違いに多い五輪では、たとえ無観客で開催したとしてもリスクは大きいと考えるのが自然ではないでしょうか。

 今のこの状況を考えれば、大会開催に固執すべきではありません。五輪憲章が掲げる理念にも反するのではないかと考えています。

 ――五輪の理念にも反すると。

 ◆五輪憲章にも記載がありますが、オリンピズム(五輪精神)という言葉があります。これはスポーツを通じて世界の平和や安定、あるいは差別を無くすことを目指していく、そうした姿勢を意味しています。オリンピックムーブメント(五輪精神を広める運動)はこのオリンピズムを広げていく活動全般のことを指し、何も大会開催だけを表すものではありません。五輪憲章ではさまざまな活動を4年間かけて行うとされ、大会はその中の一つとして1年目に開くよう定められているに過ぎません。コロナ禍の今、大会だけに固執するのは、オリンピズムあるいはオリンピックムーブメントに反すると言っていいと、私は思います。

繰り返された「受け狙い」の理念

 ――東京五輪の理念として国は「復興五輪」を掲げてきましたが、ここに来て菅義偉首相は「コロナに打ち勝った証し」という新たな大義名分を打ち出しています。

 ◆東京は石原慎太郎さんが知事だった2005年ごろから誘致活動に乗り出しましたが、「なぜ東京で2度目の五輪なのか」という理念がはっきりしていませんでした。結局16年大会の開催都市争いではリオデジャネイロ(ブラジル)に敗れたのですが、これで終わるのかなと思ったらもう1回挑戦することになった。その後の国などの動きを見ていると、俗な言い方になってしまいますが、「受け狙い」に走ってきたように思います。

 東日本大震災や福島第1原発事故から復興した姿を世界に発信するのだと。当時の安倍晋三首相などはこう説明していました。もちろん、五輪開催を力に東北の復興を一段と前に進める、復興に道筋を付ける思いが本当にあったとすれば、立派な理念だと思います。ところ…

この記事は有料記事です。

残り1598文字(全文2817文字)

【森五輪組織委会長辞任】

時系列で見る

次に読みたい

あわせて読みたい

注目の特集