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読書感想文コンクール 孤独和らげる本との対話

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 新型コロナウイルス禍にあって、本の力が再認識されている。

 第66回青少年読書感想文全国コンクールの入賞者が決まった。公益社団法人全国学校図書館協議会と毎日新聞社が主催し、毎年開かれている。

 コロナの影響で各地の学校は昨春、最長で3カ月休校となった。大半の学校で学習の遅れを取り戻すため夏休みが短縮された。

 そうした中でも、コンクールには全国の小中高校と海外日本人学校の計2万2208校から207万編余りの応募があった。

 コロナ禍に触れた作品も少なくなかった。感染防止のため友達との関わりを制限され、子どもたちは孤独や不安を抱えている。その境遇を、戦時中を舞台にした本の世界と重ねたものもあった。

 コロナ下では、巣ごもり生活により、読書にじっくり取り組む人が増えた。子どもたちにもその変化は伝わっているに違いない。

 埼玉県越谷市立北中3年の嶋屋涼子さんは課題図書「天使のにもつ」(童心社)を読み、大人になることの意味を考えた。

 主人公の男子中学生は、保育園での職場体験で虐待被害を疑わせる男児と出会う。悩んだ末、男児のために自分ができることを見つける。

 嶋屋さんはストーリーを丹念に追い、主人公の成長を感じ取る。「『大人になる』とは、他人が背負う『にもつ』を理解し、それに寄り添ってあげられる度量の広さを持つこと」と気づく。

 本と向き合う姿勢が評価され、中学校の部の文部科学大臣賞に選ばれた。

 読書は孤独な作業だ。だが、著者や登場人物との対話を通じ、むしろ孤独を和らげることがある。

 随筆家の寺田寅彦は歌集を読むことについてこう書いている。

 「読み初めには独りで、広い野原に立っているような気がする。読んでいくうちにいつの間にか二人連れになる。(中略)全篇(ぜんぺん)を読み終(おわ)るころには、私はその道連れとすっかり友達になっている」

 小説や詩集を読み、同じ感覚を経験した人も多いだろう。

 外出や他人との交流がままならない今こそ、大人は子どもに読書の楽しさを伝え、本との対話を共に深めてほしい。

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