1日11時間車椅子に拘束された女性 いまは古紙回収の仕事も「がんばる」
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2016年7月26日に入所者19人が元職員によって殺害された障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)。事件後、園では入所者に対して虐待が強く疑われる長時間、長期間の身体拘束が続いていたことが明らかになった。園を運営する社会福祉法人「かながわ共同会」は、草光純二理事長や入倉かおる園長ら幹部3人を6月に退任させ、改革に取り組むという。なぜ、入所者への身体拘束は避けられなかったのか。その答えを探して、津久井やまゆり園に約20年入所し、その間、断続的に車椅子に長時間拘束されていた女性のもとを訪ねた。【上東麻子/統合デジタル取材センター】
手を顔に当てる動作の意味
昨年の春、初めて会った時、やまゆり園の元入所者の由美さん(41)=仮名=は年齢より幼く見えた。明るい日差しが差し込む広い作業スペースでパズルに夢中だった。
プラスチックの箱の穴と同じ形のピースを探し、一つずつはめていく。しばらく眺めていると、すべてのピースを入れ終わったようだ。「全部できたね」。傍らの女性職員から声をかけられた由美さんは、ゆっくりとテーブルから顔をあげた。子どものような笑顔だった。
時々、手を顔に当てる動作を繰り返す。この動作が彼女のつらい過去と関わっていることを知ったのはしばらく後のことだ。
「由美さんが津久井やまゆり園を出て、うちのグループホームに来たのは18年5月です。来た時は車椅子に長期間拘束されていたせいか、うまく歩けない状態でした」
由美さんの支援者はこう振り返る。最初は上体を大きく揺らしながら歩いていたが、現在は歩行も安定してきた。毎日、住んでいるグループホームから数百メートル離れた日中活動の作業場所まで歩いて通う。パズルなどの機能訓練をしたり、絵を描いたりするほか、週に数回は近くの団地の古紙回収の仕事もしている。
車椅子に1日11時間縛り付けられる
由美さんは17歳の時に津久井やまゆり園に入所した。24年前。…
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連載
#やまゆり園事件は終わったか~福祉を問う
植松聖死刑囚の死刑判決が確定した相模原障害者殺傷事件。日本の障害福祉政策の問題点と、解決の道筋を探ります。
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筆者
上東麻子
1996年毎日新聞入社。佐賀支局、西部本社、東京本社くらし医療部などをへて2020年から統合デジタル取材センター。障害福祉、精神医療、差別、性暴力、「境界」に関心がある。2018年度新聞協会賞を受賞したキャンペーン報道「旧優生保護法を問う」取材班。連載「やまゆり園事件は終わったか?~福祉を問う」で2020年貧困ジャーナリズム賞。共著に「強制不妊ーー旧優生保護法を問う」(毎日新聞出版)、「ルポ『命の選別』誰が弱者を切り捨てるのか?」(文藝春秋)。散歩とヨガ、ものづくりが好き。