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「このまま開催すれば五輪の価値を下げる」オリンピアンのスポーツ経済学者

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杉本龍勇・法政大教授=東京都町田市で2020年12月18日午後2時41分、田原和宏撮影
杉本龍勇・法政大教授=東京都町田市で2020年12月18日午後2時41分、田原和宏撮影

 今夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催に批判的な声が高まっている。新型コロナウイルスの感染は世界各地で広がっており、収束の見通しは立たない。商業化の一途をたどるメガイベントは祝祭の場となるのだろうか。スポーツ経済学が専門で、1992年バルセロナ五輪陸上短距離代表の杉本龍勇・法政大教授(50)は「このまま開催すれば、五輪の価値を下げることになる」と警鐘を鳴らす。【聞き手・田原和宏】

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は「五輪は人類にとってトンネルの先の光となる」と語るが、欧州などではロックダウン(都市封鎖)を繰り返す国もある。発展途上国となれば、さらに厳しい状況にある。

 IOCが巨額のテレビ放映権料を目当てに開催に固執しているように映る。政府の「コロナに打ち勝った証し」という表現も、普通の人々の生活と懸け離れている。新型コロナに感染して苦しんでいる人、経済的に困窮している人も多い。五輪が希望の光になるとは思えないし、共感もできない。五輪を歓迎する雰囲気になれるかと言われたら、とてもなれない。

 バルセロナ五輪に出場し、五輪の素晴らしさや価値は肌で感じた。競技会場や選手村だけでなく、街全体で五輪を堪能することができた。スタッフやボランティア、市民ら誰もが五輪を楽しむ雰囲気があった。6位入賞した男子400メートルリレーでアンカーを務めたが、スタートの号砲が鳴る前から目の前が真っ白になった。見えるのは仲間が走るレーンだけ。音も聞こえない。競技に集中できる、心理学的にいう「ゾーン」にすっと入れる最高の競技環境だった。世界選手権や他の国際大会では味わえなかった感覚だった。アスリートも観客もスタッフも全てのパワーが結集すれば、突き抜けたものが生まれる。あの時の記憶は今も鮮明に残っている。

 五輪を素晴らしい舞台だと思うからこそ、今の世界の状況であのような祭典ができるのか疑問に思う。むしろ開催することが、五輪本来の価値を下げるのではないか。IOCは市場を広げる、収益を上げることを重視するあまり、開催規模を拡大させ過ぎてしまった。

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