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アートの扉

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発見!お宝 横浜美術館/3 ボルタンスキー シャス高校の祭壇 「誰か」の、「誰も」の死

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1987年 写真、金属の(ビスケットの)箱、電球、電線 縦245センチ、横23センチ 横浜美術館蔵© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo 2020 C3415
1987年 写真、金属の(ビスケットの)箱、電球、電線 縦245センチ、横23センチ 横浜美術館蔵© ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo 2020 C3415

 フランス現代美術を代表するボルタンスキー(1944年生まれ)は、写真や何気ない日用品を用い、記憶や死を喚起する作品を手がけてきた。ユダヤ教徒だった父親(後にキリスト教に改宗)の死を機に、80年代半ばからユダヤ人の歴史を扱うインスタレーションを作り始めた。

 本作は、そのシリーズの一つ。金属のフレームの中に人物写真が遺影のように収められ、薄暗いランプの明かりに照らされている。棺(ひつぎ)のように積み上げられているのはブリキのビスケット缶だ。ぼやけるまで拡大された笑顔の写真の人物たちは、31年にウィーンのユダヤ人高校の最終学年に在籍していたことだけが確認されていて、その後の第二次世界大戦を生き抜いたのかはわからない。薄明かりの中、整然と並べられた不穏な祭壇は、確かに生きていた「誰か」の、そして「誰にでも」訪れる死を想起させる。

 ボルタンスキーのインスタレーションは「スペースの特徴に合わせて作り直す」ことが求められる。展示する際には、写真やブリキ缶を一つ一つ壁に固定していくが、この作業にはかなりの時間を要するのに加え、作品のパーツ自体に負担をかけることになる。作品の本質を損なわないよう作家と協議した上で、写真は展示による劣化から保護するため複製に、ランプは、経年劣化でオリジナルのプラスチック製のクリップが展示に耐えられな…

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