専門家が説く中国・海警法 日本政府は「国際法に違反」メッセージの発信を

  • はてなブックマーク
  • メール
  • 印刷
2016年9月11日に領海侵入した海警2337=海上保安庁提供(撮影日は過去)
2016年9月11日に領海侵入した海警2337=海上保安庁提供(撮影日は過去)

 中国海警局の武器使用など業務を定めた「海警法」が施行されてから、1週間以上が経過した。沖縄県・尖閣諸島周辺で6、7両日、中国公船2隻が日本の領海に侵入するなど海警局の動きも活発化している。「国際法違反の項目が多数含まれている」とも指摘される同法。数多くの中国の行政文書を読み解き、その行動原理と対外政策を見つめてきた中国の専門家、益尾知佐子九州大准教授は「率直に言って、エグい法律です」と警鐘を鳴らす。この法律を通じ、中国は何をしようとしているのか。日本はどう対応すればいいのか――。詳しく解説してもらった。 【聞き手・青木純】

海警局は軍の指揮下

 海警法は中国海警局、および中国の沿海地域に設置されたその地方局などの職務内容をまとめた法律です。同法ではこれらをまとめて海警機構と呼んでいますが、今回は日本で普段、使われている海警局という呼び方を使っておきましょう。

 この海警局は2013年に中国海監、漁政、公安部辺防海警などの既存の機関をまとめる形で発足しました。その時は中国政府、つまり国務院の一組織である国家海洋局の中に置かれ、公安部の指導も受けていました。

 しかし18年、海警局は中国共産党・中央軍事委員会の指揮下に配置換えとなり、国家海洋局の他の部署も三つの組織に解体されました。これにより、中国の海洋統治の責任主体は不明確になっていました。そうした中で、この海警法は海洋統治の強化に向けた国内法上の基礎をつくるとともに、海警局にその中心的な地位を与え直す役目を担っているのです。

 海警局は日本の海上保安庁と比較されることが多いのですが、海保が行政機関として位置付けられているのに対し、海警局は法律上、中国政府の組織としては位置付けられていません。党中央軍事委員会の指揮下にある「人民武装警察部隊(武警)」の「海警部隊」である、という規定があるだけです。

法整備で当局者に精神的重圧も

 海警局の業務は既に始まっているにもかかわらず、今になって法整備を行った理由は何なのか。重要なのは、…

この記事は有料記事です。

残り3177文字(全文4023文字)

あわせて読みたい

注目の特集