放送事業会社「東北新社」に勤める菅義偉首相の長男が、総務省幹部を接待したとされる問題の解明が進まない。
野党の質問に対し、総務省の関係者が、同省や国家公務員倫理審査会が調査中であることを理由に答弁を拒んでいるからである。
これでは、かえって「もっと何かを隠しているのではないか」と国民の疑念が深まるばかりだ。
首相も「長男は別人格」と繰り返し、まるで人ごとのようだ。
総務省の幹部4人が昨年、東北新社の幹部と無届けで会食し、手土産などを受け取っていたという不祥事である。
放送事業を所管する総務省の職員が、同社のような利害関係者から接待を受けるのは国家公務員倫理規程に違反する可能性が高い。 加えて会食には同社社員である菅首相の長男が同席していた。
同社側には首相の長男という立場を利用して、事業の許認可などを有利に進める狙いがあったのではないかとの疑念がある。
ところが会食に出ていたとされる総務省の幹部は当初、会食の事実を認めて一定の説明をしていたにもかかわらず、その後は一転して「調査中」の一点張りだ。
警察、検察当局の捜査対象となっている関係者が、捜査への影響や、自身が訴追される恐れがあることなどを理由に、国会での答弁を拒む例はままある。
だが倫理審査会は人事院の下に置かれた組織だ。国会答弁が審査会の調査の支障となるとは思えない。国会の場で国民に向けて説明することこそ公務員の責務だ。
総務省幹部は、詳しく説明して長男問題が尾を引けば、菅首相のダメージとなり、その結果、自分は左遷されるかもしれないと恐れているのではないか。
官僚の人事を思い通りに動かすことで権力を掌握してきた首相だけに、そんな疑いを抱く。そうだとすれば忖度(そんたく)政治の弊害である。
先の衆院予算委員会では総務省側の答弁が不十分だと野党が反発して退席し、1時間以上審議が止まった。時間の空費は残念だ。
この状況を変えるには、首相が総務省に「私のことは気にせず、きちんと説明を」と指示することである。それが首相が掲げる「当たり前の政治」というものだ。
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