女性蔑視発言の根底に潜む「五輪ファシズム」の危険性
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東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言を巡って、「彼だけに攻撃が集中すると隠されてしまうものがある」と危惧する人がいる。7年越しで五輪反対キャンペーンを展開してきた鵜飼哲・一橋大名誉教授(フランス現代思想)だ。オリンピックには、市民の生活を脅かす「五輪ファシズム」が根底にあると喝破する。哲学者ジャック・デリダの愛弟子として知られる鵜飼さんは、近代五輪の父と言われるフランスのクーベルタン男爵の思想がはらむ危険性にも厳しい目を向けてきた。五輪ファシズムとは何か?【聞き手・上東麻子/統合デジタル取材センター】
始まりは宗教的祭儀
――クーベルタン思想がはらむ危険性とは?
◆オリンピックは古代ギリシャの宗教的祭儀でした。近代五輪の創始者のクーベルタン(1863~1937年)も「オリンピズムとは第一に宗教である」と明言しています。聖火はその象徴です。欧州からキリスト教が後退し、社会を一つにまとめる精神的なものがなくなった危機感の中で彼は育ちました。貴族制度は復活できないが、それに代わるエリート集団が社会を導かなくてはいけない。そして彼は知育・徳育・体育の三位一体の鍛錬で、「生まれは平等なエリート集団」が作り出せるという教育思想にたどり着いたのです。国際オリンピック委員会(IOC)は今も王族や貴族のサロンです。そこに元オリンピアンが(新しくIOC委員などになり)「新貴族」として入っています。
クーベルタンの著書「スポーツ教育学」などには驚くべき内容が書かれて…
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筆者
上東麻子
1996年毎日新聞入社。佐賀支局、西部本社、東京本社くらし医療部などをへて2020年から統合デジタル取材センター。障害福祉、精神医療、差別、性暴力、「境界」に関心がある。2018年度新聞協会賞を受賞したキャンペーン報道「旧優生保護法を問う」取材班。連載「やまゆり園事件は終わったか?~福祉を問う」で2020年貧困ジャーナリズム賞。共著に「強制不妊ーー旧優生保護法を問う」(毎日新聞出版)、「ルポ『命の選別』誰が弱者を切り捨てるのか?」(文藝春秋)。散歩とヨガ、ものづくりが好き。