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和解のために 2021

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元徴用工判決 「現在」が裁いた過去 歴史の司法化

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インタビューに答える朴裕河・韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日、宮本明登撮影
インタビューに答える朴裕河・韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日、宮本明登撮影

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は1月の記者会見で、元徴用工訴訟を巡り、敗訴した日本企業の韓国内資産を売却する「現金化」に触れ、「望ましいとは思わない」と発言した。「司法尊重」の原則論から一転し、政治主導の解決を求めることになるのだろうか。韓国・世宗大の朴裕河(パク・ユハ)教授は、法律家や法学者らが1990年代から「法的責任」の追及を主導してきた経緯を指摘し、その再検討を提案する。

 2018年の元徴用工判決は、韓国併合不法論や日韓基本条約不十分論に基づいている。新日鉄に命じているのが「賃金」ではなく「慰謝料」の支払いである理由も、正にこうした1990年代の認識にあった。つまり元徴用工判決は徴用工の生活や待遇などの「被害」事実を超えて「正常でない」とみなされた過去の清算のあり方を「正す」試みでもあったのである。もちろん、そのような試みがかたちを成すまでには20年以上の歳月がかかっていた。もし右派の裁判官が同じく右派的な考え方で判決を出していたら、結果は違っていただろう。その意味では18年の判決は、良しあしは別として「現在」が過去を裁断した判決というほかない。

 しかも、明らかに政治外交問題となっているにもかかわらず韓国の文在寅大統領が一貫して「司法府の判断だから」といって関与しない態度を取ったように、そうした考え方が司法府の判断=「判決」になることで歴史問題に関わる最終の判断としての位置を獲得できたことにもう一つの問題があった。連載の第1回で触れたように、それは文大統領自身が韓国で起こされた最初の裁判に弁護人として名を連ねていたからでもあるはずだが、それ以上に、「法」の判断への信頼がさせたことであろう。慰安婦問題の関係者たちが「法的責任」を求めてきたことを受けて、文大統領が「法的責任」を言うようになったのもそうしたことの結果である(支援者たちは長らく国会で作った法に基づく「法的賠償」と「公式謝罪」を要求してきた。そのことが「法的責任」を取ることと考えられてきたのである。…

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