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なぜ「笑い声」?女性蔑視発言と日本の病理をジェンダー論で見る

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日本オリンピック委員会前で、東京オリンピック・パラリンピック組織委の森喜朗会長の女性蔑視発言への抗議活動をする人たち=東京都新宿区で2021年2月11日午後2時58分、宮間俊樹撮影
日本オリンピック委員会前で、東京オリンピック・パラリンピック組織委の森喜朗会長の女性蔑視発言への抗議活動をする人たち=東京都新宿区で2021年2月11日午後2時58分、宮間俊樹撮影

 ようやくか、と思った人も多いのではないか。女性蔑視発言の責任を取って、森喜朗・東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長が辞任を表明したことである。この問題を巡っては、森氏が差別発言を行った際に会合参加者から笑い声が上がったことや、政府・与党から森氏をかばう言動が相次いだこと、さらには後任として、同じく高齢男性である川淵三郎氏への「禅譲」が図られたことも国内外のひんしゅくを買った。「森騒動」が浮き彫りにしたのは何だったのか。ジェンダー論に詳しい大妻女子大教授の田中東子さん(メディア文化論)に聞いた。【待鳥航志/統合デジタル取材センター】

一連の問題が、女性たちの日常の経験と重なった

 ――森氏の蔑視発言から辞任表明まで9日間。この間の動きをどう評価しますか。

 ◆「遅きに失した」と言わざるをえません。五輪憲章はいかなる種類の差別も禁じ、女性の地位向上の促進もうたっています。森さんは発言の直後、一度は固めた辞意を組織委の関係者らに慰留されて翻したという報道がありましたが、結果的にこの時点で辞任しなかったことは大きな誤りだったと思います。発言が五輪の精神からいかに外れているのか、そしてそれを国際社会がどう受け止めているのか。そうしたことを全く理解できていないという、認識の低さを示してしまいました。たとえうっかりの失言だったのだとしても、自身が代表している組織の理念に合わない言動をした以上は、最初の段階で辞めるのが筋だったと思います。

 ――国内外の批判に押され、しぶしぶ辞任に追い込まれた印象です。

 ◆海外メディアの批判報道や国際オリンピック委員会(IOC)の声明が影響を与えたのだと思いますが、私が意外だったのは働く女性たちの間で非常に広範に批判的な意見が広がったことです。私のようにフェミニズムやジェンダーの研究をしていたり、女性の人権問題に携わっていたりする立場の方から怒りの声が上がることは予想しましたが、SNSなどを見ていると、普段はあまりこうしたテーマに関心を示さないような一般の働く女性たちが批判的な投稿をしているのを多く見ました。働き方、職業、エリート/非エリート関係なく、さまざまな女性たちが怒りを表明したのです。

 これほど怒りが広がったのは、一連の問題が日本の社会や組織を象徴するものだったからではないでしょうか。日本中のあらゆる組織がまだまだ男性中心で、…

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