連載

リモートワーク最前線

インターネットや柔軟な働き方の導入で「会社から離れて働く」ことが注目されています。「働くこと」はどう変わる?

連載一覧

リモートワーク最前線

ワーケーションのどこに政治家は関心があるのか

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
新しい働き方として注目されるワーケーションに社員が挑戦することは会社にとっての実証実験にもなる=和歌山県串本町で2019年8月23日正午、今村茜撮影 拡大
新しい働き方として注目されるワーケーションに社員が挑戦することは会社にとっての実証実験にもなる=和歌山県串本町で2019年8月23日正午、今村茜撮影

 仕事と休暇を組み合わせた新しい働き方「ワーケーション」は、日本に根付くのだろうか。昨年12月には自民党議員有志が「ワーケーション推進議員連盟」(会長・鶴保庸介参院議員)を発足させ、2月17日に、第2回総会が開かれた。政治家はどこに関心を持っているのだろう。2018年から子連れでワーケーションを実践している記者も気になって取材してきた。【今村茜/統合デジタル取材センター】

 「日本に根付かせるためには、まず企業に浸透させないと」「子どもがいたらどうするの?」 17日に衆院議員会館で開かれた第2回総会では、議員からの質問が相次いだ。労務管理や旅費をどうするか、何を整備しなくてはいけないのか……。普及には課題が山積している。

まだまだ手探り状態の「ワーケーション推進議員連盟」第2回総会=東京都千代田区の衆院第1議員会館で2021年2月17日午前10時、今村茜撮影 拡大
まだまだ手探り状態の「ワーケーション推進議員連盟」第2回総会=東京都千代田区の衆院第1議員会館で2021年2月17日午前10時、今村茜撮影

 その前に、まずワーケーションにまつわる政府側の動きを整理したい。ワーケーションを叫ぶ官公庁は多数あれど、組織によって目的は違う。10年近く前からワーケーションに似た「ふるさとテレワーク」の実証実験を進める総務省はICT(情報通信技術)普及の観点、新規参入した観光庁はコロナ禍で低迷する観光需要の底上げ、3密を避けて自然の中で働く環境整備をうたう環境省は国立公園や温泉地の利活用、内閣官房は東京一極集中是正と地方への移住・定住促進が最終目標だ。

 自治体側も事情は同じ。19年11月に自治体の連携組織「ワーケーション自治体協議会」を設立し、加盟数は169自治体(2月10日時点)に膨らんでいるが、それぞれの地域の事情によりワーケーションに期待するものは異なる。担当部署が企業課であれば企業のサテライトオフィス誘致、移住定住課であれば人口増、観光課であれば観光対策だ。思惑の異なる組織が「ワーケーション」という言葉で一気に課題解決を図っている構図も浮かびあがる。

 このように、「これで一挙に解決できるのでは」といった期待をされがちなワーケーションだが、実際は課題が山積している。この日の議論で指摘された課題を紹介したい。

 まず、社会に浸透させるには、実際にワーケーションができる人を増やさねばならない。ヒアリング対象者として出席した和歌山県の桐明祐治情報政策課長は「アメリカでは5700万人と日本の人口の半分がフリーランスで、働く場所の制約がない。しかし日本では(フリーランス人口が就業者に占める割合は)5%(の341万人)。95%は企業に属しながら仕事をしており、企業への普及が重要な観点」と強調。

 日本テレワーク協会の大沢彰主席研究員は、昨秋から3回に分けて企業経営層などから聞き取ったアンケート調査結果を発表。ワーケーションに期待する効果には「新たな事業の開発につながる」、普及の意義は「事業や経済の競争力強化」、受け入れ先への期待は「机、椅子、会議室やセキュリティー対策」を挙げる声が多く、「極めて真面目な仕事志向。(経営層は)リフレッシュして仕事をしてほしいと考えている」と訴えた。また、企業への導入にはワーケーション先で仕事ができる環境整備が急務だと指摘した。

和歌山県では18年と19年夏に、親が仕事をしている間、子どもは地域ならではのアクティビティーをする「親子ワーケーション」プログラムを開催。ワーケーション普及には子どもの受け皿整備も課題だ=和歌山県串本町で2019年8月24日午前10時、今村茜撮影 拡大
和歌山県では18年と19年夏に、親が仕事をしている間、子どもは地域ならではのアクティビティーをする「親子ワーケーション」プログラムを開催。ワーケーション普及には子どもの受け皿整備も課題だ=和歌山県串本町で2019年8月24日午前10時、今村茜撮影

 ワーケーションの旗を振る国家公務員も昨年11月、ワーケーションを実践した。総務省が統括し、内閣官房や環境省などの中央省庁職員らが和歌山県白浜町と長野県軽井沢町で実施した「地域型テレワークトライアル」には官民あわせて延べ111人が参加。人事制度は既存のテレワーク規定を適用し、情報セキュリティーも事前確認で問題なかったという。一方で「出張として行くが(私事旅行に切り替え現地で)楽しんで帰ってくると帰りの旅費は出ない」「1泊2日がほとんどで、日帰りの人もいた。本人だけ行き家族は置いていくイメージを持っていた人が多かったようだ」(総務省の飯倉主税情報流通振興課長)などと、旅費は業務と私事の区別が必要になり、家族をどうするかなどの課題も浮き彫りになった。

 議員からも意見が出た。務台俊介衆院議員(長野2区)は、「(リゾート地の)軽井沢や白浜町もいいが、むしろ過疎地域に来てほしい。これまではハンディキャップと思われていた地域にワーケーションの仕組みをいれることで起爆剤になればいい」と発言。山谷えり子参院議員は、ワーケーションなど新しい旅のあり方を提唱した新著を引き合いに「和歌山県は(南紀白浜空港を運営する)南紀白浜エアポートが県と一緒に取り組んでいる。コーディネーターが自治体とともにあったほうが成功率が高まる」と述べ、自治体と企業を結ぶコーディネート役の必要性を訴えた。

 ワーケーションは身軽な一部の人だけができる働き方だと見なされがちだが、今は共働き世帯が主流。子どもがいても実践できる仕組みづくりが求められている。2児の母の鈴木貴子衆院議員は「私が行ったら、間違いなく『うちの子どうなるんだよ』となる。家族でのワーケーションで、親が働いている間は子どもは国立公園のレンジャーなどと自然や文化を学ぶなどのアプローチはないか。保育関係、厚生労働省なども一緒に取り組みを考えてほしい」と要望した。

和歌山県では親子で楽しめるワーケーションなど多彩なプランが実践された=和歌山県白浜町で2018年7月23日午後3時半、今村茜撮影 拡大
和歌山県では親子で楽しめるワーケーションなど多彩なプランが実践された=和歌山県白浜町で2018年7月23日午後3時半、今村茜撮影

 議連は今後、関係団体へのヒアリングを重ね、政府への提言などを目指す。次の第3回総会では民間企業や、既存の旅行業法や旅館業法と実態とのギャップに苦しんでいる宿泊事業者にも意見を聞く方針だ。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集