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岡林信康さん、23年ぶり新作アルバム 「ふっと曲が生まれた」

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自宅近くの畑で農作業をする岡林信康さん=2020年11月(ディスクユニオン提供)
自宅近くの畑で農作業をする岡林信康さん=2020年11月(ディスクユニオン提供)

 もう俺から歌は出てこないと思っていた――。

 「友よ」「山谷ブルース」などの楽曲で知られ、「フォークの神様」とも呼ばれたシンガー・ソングライターの岡林信康さんが、23年ぶりとなる書き下ろしの新作アルバム「復活の朝」を3月3日に発売する。「作詞作曲家としては終わり、歌手として生きていこうという気持ちでいた」という岡林さん。再び曲作りに向かったのは、コロナ禍がきっかけだったという。

再びの曲作り、コロナ禍がきっかけ

 2020年6月、動画投稿サイト「ユーチューブ」で「復活の朝」と題した曲を発表した。12年の「さよならひとつ」以来8年ぶりの新曲。人の消えた地球に豊かな自然が戻る情景を歌った。

 「コロナで工場や車がストップし、北京に青空が戻ったという新聞記事を読みました。自然や生態系にとって、人間はいない方がいいのかもしれない。人間が地球から完全にいなくなったらどうなるんだろう。そんなことを考えているうちに、ふっと曲が生まれたんです」

 孫への思いをつづった「さよならひとつ」も14年ぶりの新曲だった。「あの時は1曲しか出てこなかったのに、今回は他の曲が続けて出てきて、自分でも驚きました」。約半年かけて、9曲が生まれた。

 コロナ禍でスタジオでの収録を避け、自宅でギターの弾き語りを録音。音源を旧知のミュージシャン、加藤実さんに送り、加藤さんがピアノなどの演奏を重ねて仕上げた。「いつもは何人かのミュージシャンとスタジオに入って、ああだこうだと話しながら録音していく。こんな作り方をしたのは初めてです」

 岡林さんは自身の楽曲を「私小説であり、ノンフィクションであり、ドキュメンタリー」と表現する。「創作というより、実際にあったこと、自分が思ったことをそのまま歌っているんです」

 「もやもやとしたものが心にたまってくると、それが歌になるかどうか分かる」という。「歌になりそうだったら、部屋にこもって七転八倒し、そのうちに歌としてすっと吐き出され、気持ちが楽になる。そうした曲の作り方は昔から全く変わっていません。歌にして吐き出す作業がないと、心を病んでしまっていたかもしれない。自分は歌のおかげでここにとどまれているという気がします」

代表曲「友よ」の続編を収録

 本アルバムには、岡林さんの代表曲の一つ「友よ」の続編とも呼べる「友よ、この旅を」が収録されている。

 1969年のデビューアルバム「わたしを断罪せよ」の収録曲「友よ」は、「夜明けは近い」「輝くあしたがある」のフレーズで親しまれたが、岡林さん自身はこの曲を長年封印してきた。「左翼のデモ行進のテーマソングになる一方で、自衛隊の駐屯地でも歌われていたらしい。そうしたことが重荷となって歌うのをやめた」と振り返る。

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