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(中公新書・968円)
民主化が暴力を強めた逆説
アジア・ナショナリズムの時代は二〇世紀に始まる。近代国民国家と無縁であったこの地域をその鋳型にはめ込むには、まず「国家」と「国民」が発見されなければならなかった。本書は、直接的にはロヒンギャ危機を扱った本であるが、「ロヒンギャ」が周辺化されていく過程は、同時にミャンマーが自己と他者の境界線を引き、「私たち」の定義を見出(みいだ)していく過程でもある。おそらくこれは、ほとんどの旧植民地に共通する体験だろう。初めて、地に足のついた脱植民地史を読んだ気がした。しかも東南アジアでは、この過程に日本が深く関わっている。
第二次世界大戦中、ミャンマーは日本軍の占領下に入った。日本軍の特務機関は、現地のナショナリスト組織「タキン党」のメンバーに海南島の海軍基地で軍事訓練を施し、ビルマ独立軍(BIA)に仕立ててミャンマーに送り返した。その中心人物であったアウンサン(スーチー氏の父親)は、ビルマ独立運動の英雄となった。
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