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米軍駐留経費の負担 幅広く両国の役割議論を

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 米軍駐留経費の日本側負担に関する両国政府の本格的な交渉が、来年度に持ち越されることになった。2021年度は暫定的に今年度と同じ水準の2017億円に据え置く。

 通常は5年ごとに交渉し、予算の根拠となる特別協定を結ぶ。だが、今回は米国で政権交代があったため、結論が先送りされた。

 昨年11月に始まった交渉で、トランプ前政権は大幅な増額を求めた。ボルトン元大統領補佐官は昨年夏、回顧録で現行の4倍超にあたる約8400億円の負担を求める考えを日本側に伝えたことを明かしている。

 バイデン政権は同盟国重視を掲げている。だが、駐留経費負担の増額や防衛予算の拡充を求める基本的な立場は変わらないとみられている。

 米国防総省が04年に発表した国別の負担割合は、韓国40%、ドイツ32%に対し日本は74%だった。現在は8割を超えるという。

 そもそも日米地位協定では、基地の維持などに関する経費は、原則的に米国が負担することになっている。

 ところが、日本政府は1978年度に、基地従業員の労務費の一部負担を始めた。協定上の義務を超えて日本側が負担する「思いやり予算」と呼ばれているものだ。

 背景には、円高・ドル安と米国の対日貿易赤字があった。米国側の「安保ただ乗り論」批判に応える意味合いもあった。

 だが、対象はその後、従業員給与や光熱水料などにも広がった。福利厚生施設で働く従業員の給与にまで及び、適正な負担なのかという批判が高まってきた。

 さらに、肩代わりの開始から40年以上がたち、両国を取り巻く状況も大きく変わっている。

 自衛隊の国際的な活動は増え、安全保障法制に基づいて任務や活動範囲も広がっている。軍備拡大を続ける中国を念頭に、宇宙やサイバー、電磁波といった新たな領域での日米協力も始まっている。

 複雑化する安全保障環境についての認識をすりあわせ、両国がどのような役割分担で対応するのかという幅広い議論をすることが重要だ。そうした土台の上で、経費負担のあり方について話し合いを進める必要がある。

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