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入管法の改正案が閣議決定された。退去処分を受けた外国人が、入管施設に長期間収容されている状況を解消するのが狙いという。
しかし、外国人の在留管理を厳格化する内容だ。不法滞在となった人の帰国を徹底させ、退去命令に従わない人への罰則も設ける。
退去処分とされた人の大半は自ら出国している。帰国を拒むのは身に危険が及ぶ恐れがあったり、日本に家族がいたりする人だ。
こうした人々への配慮を欠いている法案だ。人権感覚を疑う。
特に問題なのは、難民認定の申請回数を制限する規定だ。難民条約は難民の可能性がある人の送還禁止を定めており、現行法では認定手続き中は送還が停止される。
改正案では、3回目以降の申請となる人は、証明資料がなければ強制退去の対象となる。出入国在留管理庁は、帰国を免れるために制度が乱用されている現状があると説明している。
だが、日本は世界的に見て難民認定の判断が厳しい。2019年は1万375人が申請したが、44人しか認められなかった。まずは審査の手続きを見直すべきだ。
収容のあり方にも問題がある。裁判所の関与がなく、収容期間の制限もない。国連の人権部門から国際人権規約に違反すると指摘されたが、対応しなかった。
一方、逃亡の恐れがない人には、収容に代わる「監理措置」が新設される。家族や支援者が「監理人」となり、社会で生活できる。
ただ、退去処分を受けた後は就労できない。公的な生活保障もないため、暮らしが立ちゆかなくなれば施設に戻るしかなくなる。
政府の改正案に先立ち、野党も改正案を国会に提出している。法相が持つ難民認定の権限を独立した組織に移し、収容には裁判官の許可状を必要とするものだ。
国会審議では、野党案も取り入れながら、人権に配慮した法制度にしていく必要がある。
不法滞在となる人を生む要因には、日本の外国人政策がある。技能実習制度で来日したものの、低賃金や劣悪な労働環境に耐えかねて失踪する人は後を絶たない。
外国人の労働力がないと成り立たなくなっている産業は少なくない。共生をうたうならば、まずは受け入れ政策から改めるべきだ。
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