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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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在任16年目になるドイツのアンゲラ・メルケル首相は…

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 在任16年目になるドイツのアンゲラ・メルケル首相は5年前、引退も考えていたようだ。翻意したのは、トランプ氏が米大統領選に勝利したからだ。その決断を、退任を前に訪独したオバマ大統領に打ち明けている▲惜別の念は互いに深かったようだ。見送るメルケル氏は目に涙を浮かべ、別れを告げたオバマ氏は首を振りながら「アンゲラはひとりぼっちだ」とつぶやいた。自由で寛容な国際秩序を2人で支えてきたという自負があるのだろう。オバマ氏の側近だったベン・ローズ氏が回想録に記している▲その後のメルケル氏の孤軍奮闘を知る人もいるだろう。主要7カ国首脳会議でテーブルに両手をつきトランプ氏に詰め寄る場面が印象深い。分断国家で生まれ育ち、国際協調を信念とするだけに、単独行動のトランプ氏は天敵だった▲3年前に引退の意向を表明し、今秋に政界を去る。新型コロナウイルス対策に悪戦苦闘しながらも高い支持率を維持する現政権の退陣は「欧州最大のリスク」とも言われる。早くも「メルケル・ロス」がドイツ内外でささやかれている▲最大与党の新党首に中道派のラシェット氏が選出されたが、迫力不足は否めない。3月には地方選が始まり、9月の総選挙までドイツは政治の季節に染まる。後任候補を含めて波乱含みという▲トランプ氏は去り、バイデン氏が大統領に就任した米国は、欧州との関係修復に乗り出した。多国間の協力が平和の礎になると信じるメルケル氏の世界観を共有していきたい。

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