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新体制のWTO 貿易の秩序立て直す時だ

 世界貿易機関(WTO)の事務局長に、ナイジェリアのオコンジョイウェアラ氏が選出された。3月に就任し、半年にわたるトップ不在という異例の事態がようやく解消される。

 初のアフリカ出身で、女性のトップも初めてだ。世界銀行の専務理事や母国の財務相を歴任した経験を生かし、自由貿易体制の立て直しに手腕を発揮してほしい。

 米中貿易戦争の深刻化で、WTOはまひ状態にある。前任の事務局長が任期途中で辞任し、後継選出が遅れたのもそのためだ。

 中国の影響力が強いアフリカからの起用には、米国のトランプ前大統領が反対していたが、バイデン政権が方針を転換した。

 米国は保護主義的な政策を改め、WTOの再建に貢献すべきだ。貿易紛争の解決機能を回復できるかが、その試金石となろう。

 WTOで司法の役割を担う「上級委員会」は委員不在のまま、1年以上活動していない。トランプ政権が、欠員補充を阻んでいたためだ。

 だが、自国の利害を優先するばかりでは、経済に悪影響を及ぼす。上級委を正常化させた上で、制度のあり方を議論するのが筋だ。

 先進国と途上国の対立緩和に向け、一層の努力も求められる。

 先進国には、中国への不満が根強い。WTO協定上、関税の設定などで優遇される途上国として扱われ、不透明な手法で自国産業を優遇していると見られるためだ。

 ただし、トランプ政権のようにやみくもに制裁を発動しても解決はしない。議論を重ね、必要な改革を一歩ずつ進めるしかない。

 中国は、ルール順守の姿勢を徹底すべきだ。他国の信頼を得るには、企業補助金をはじめとする産業政策の透明化が欠かせない。

 WTOの最大の使命は、経済の変化に対応した投資や取引に関するルールを決めることだ。しかし、加盟国間の利害調整が難しく、役割を果たせていない。

 日本は、国境をまたぐデータの流通や電子商取引を円滑に行う環境整備を主導する。議論を前進させ、WTOを支えてもらいたい。

 コロナ禍で医療品を囲い込む保護主義的な動きも広がった。自由で公正な貿易を守るため、加盟国の協調を取り戻す契機としたい。

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